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Vol. 03:デザインで問題解決していますか?


   白紙から考えを設計し、
   個人と企業を成長させる
   問題解決のためのデザイン




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ウジ トモコ
株式会社ウジパブリシティー代表、アートディレクター(デザインマーケティングカフェ主催)


多摩美術大学グラフィックデザイン科卒。広告代理店および制作会社にて三菱電機、日清食品、服部セイコーなど大手企業のクリエイティブを担当。デザインを 経営戦略として捉え、採用、販促、ブランディング等で飛躍的な効果を上げる「視覚マーケティング」の提唱者。ビジュアルディレクターとして数多くの企業の 新規事業開発、事業転換期のデザイン戦略を立案。視覚戦略を駆使したパフォーマンスの高いクリエイティブに定評がある。
ちばデザイン塾(千葉工業大学主催)、日本マーケティング研究協会、やまなしものづくりデザイン塾講師などセミナー多数。
著書に『視覚マーケティングのススメ』、『売れるデザインのしくみ』などがある。


長谷川敦士
株式会社コンセント代表、amuディレクター、NPO法人人間中心設計推進機構理事、IAAJ主宰。
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問題解決と差別化のデザイン

ウジ:日本ではいまだにアートとデザインの違いがまだまだはっきりと認識されていないなぁと感じる事は多いですね。アートが終わりのない概念や表現の探求であるのに対して、デザインは前提としてマーケットもあるし、課題もあるし、ゴールもある。デザインというのは、問題も解決しないといけないし。

長谷川:私は、デザインはエンジニアリングだと思っていますね。エンジニアリング、つまり工学ですが、タイヤをつくる、ねじをつくるっていう技術的な話もあるけれど、広い意味では問題を解決するということですよね。

ウジ:そうですね。デザインでは、問題解決しなくてはいけない。あと、実はもう1つあるなぁと思っていて、「視覚マーケティングのススメ」に実は以前から書いていていたんですがつまり、デザインには、機能としてのデザインと存在としてのデザイン、この二つがある。と思うんです。そしてどちらが、でなくどちらも大切なんです。ところが機能派と存在派がさっきのアートとデザインの話じゃないですけど、双方の不理解から遊離してしまいがちなケースが多くて。かつて、マス媒体で一商品に億単位の宣伝費という時代が確かにあったと思うんですが、その時の名残と言うか「デザインがクールなんだから、機能はあきらめてくれる?」みたいな雰囲気が未だに残っているんですよ。もちろん逆もあると思いますが。そういうのって、今時どうなんだろう。日本の退化を招いていませんか?

20_original_re.jpg長谷川:それに、何よりも当時は、まず他のブランドや商品との差別化をしてキャラを立たせることが一番に求められていたからですね。

ウジ:でも、大きなマーケットに大きく宣伝をしてただ売ればいいという時代は既に終わりましたし、小さな価値あるものものがたくさん可視化されている時代ですし。

長谷川:キャラ立てというか差別化というか、それを見るにはデザインを決める際の競合プレゼンというのは有効ではありますよね。でも、存在のアイデンティティは明らかになっても、そのキャラで進めたときの機能性については、競合プレゼンではわからない。

ウジ:そうですね。うちではもう競合コンペとかにほとんどでていないので、twitterなんかでみかけるんですが、8社競合とかって(社会コスト的にも)本当にもったいないなぁと思います。

長谷川:これまでのマスの時代はキャラを立たせることが第一だったから、それが得意な制作会社が残ってきたけれど、今なお、それは意志決定者の中にも残っていますよね。デザインプロジェクトを買う、という意識は少ない。 私が代表を務めるコンセントではクリエイティブのフェーズというのは制作の中盤以降なんです。それ以前に、リサーチとか、提供価値は何なのかという検討をし、それに基づいて、どういうコミュニケーションをとりたいかという提案が固まり、その上でキャラを立てるためのモチーフがやっと決まる。プレゼンへも、デザイン案よりそういったプロセスを持って行くことが多いのですが、そういう発注体制を持っているクライアント企業というのは絶対数が多くはないですね。




前例主義から脱却し、白紙から設計する

ウジ:インフォメーションアーキテクチャとかペルソナといったことは、よくわからないから取り入れられないというのはあると思うんですよね。

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長谷川:わからないから手を出せないというのはそうですね。でも、何がわかっていないかをまじめに考えていないということもあると思いますね。ビジネスマンのプレゼン資料も、詰め込みすぎていてわかりにくいものが多いけれど、そこに問題があるということがまずわかっていないんだと思います。何がいいもので、何がまずくてということと、どういう風にそれを見るべきかという視点を持っていなくてはいけない。日常、パワーポイントでの資料をどんどん作っているような企業の中堅どころで企画に携わる人には、ぜひそういった視点を持ってもらいたいと思いますね。いま巷にはプレゼン資料の作り方の本が溢れていますよね。そういったニーズはあるんだと思いますが、でもまだきちんと問題が認識されていない段階なのでしょう。

ウジ:わかりにくい企画書が多いというのは、前例主義で、ダメなテンプレートをバッドコピーしている状況だと思うんです。言ってしまえば、ダメな秘伝のたれを使いまわしているという状況。そもそも、それは何なのか、という白紙のところから作るから企画書なのに。そもそも、情報とは?デザインとは?というところを、小中学校の時に、きちんと白紙から設計してアウトプットする訓練があれば、あんなにダメな資料は生まれないと思うんです。というかその「思考の癖」は危機ですよね。危機感をもっと持たなくちゃいけないのでは。

長谷川:情報教育も、だからゼロから考えさせればいいんでしょうね。

ウジ:情報教育については、情報リテラシーということではよく教えられていると思います。最近の人の方が、情報を鵜呑みにしないとか、必ず裏を取ったりしようとするので。ただ、アウトプットをどうやるかということや、自己表現、つまり人に伝えるための基本的な技術の部分がまだまだ不十分ですよね。
先日、八戸市のセミナーの講師に招いて頂いて、翌日十和田現代美術館に地元の方に連れていっていただいたのですが、素晴らしかったですね。現代アートの概念やリテラシーのない人のためにもきちんとゼロベースから考えられていて、UX(ユーザーエクスペリエンス)がきちんと導線に組み込まれていました。現代アートがより体験デザインに近いというのはもちろんあるからかもしれませんが。そこの特認館長の方と話していたのですが、義務教育なんかでのものづくりの授業、あれがそもそもいけないのではないか、と。図画工作とか技術家庭科で本棚とかエプロンといったものを「今日はこういうものを作りましょうね」って、作る前に見せられのですが、実際、その作る前に見せられた、見本に近づけたものが評価されるので、優等生で頭のいい生徒ほど創造性で枠から飛び出すことができなくなる。知性派で企業のブランド担当なのにつくるデザインの資料が『え?』というものが出来上がる。何かにそっくりだったり、デザインされていなかったり、創造的なものづくりに適した資料が作れない人が増えるのだと思います。




デザインを取り入れることで企業は幸せになれる

ウジ:会社のツール(ウェブも含めて)を作る時には、そのツールは会社のいわば分身みたいなもののはずなのに、いつもなにかの成功事例を追いかけていて「どこそこの企業みたいな」っていう願望は未だ強いんですよね。「優等生を目指さなきゃいけない」って、もう刷りこまれてしまっているんです。他社と同じでいいはずがないし、その会社の中でも紙があって、ウェブがあって、営業があって、工場があってというところから考えたら、デザインのアウトプットってそもそも同じになるはずがない。

長谷川:言い訳としての説明、反論としての説明じゃなく、ストーリーが担当者の中できちんと腑に落ちていなくて、それで説明できないというのが原因でしょうね。

38_origina_rel.jpgウジ:会社案内や企業のリ・ブランディングのオーダーは多いのですが、一般的な意識としての会社案内の基準になっているもののほとんど=「秘伝のたれ」はバブル期、予算がたくさんあって、大小どんな会社も作っていたころのものだったりします。そういう作りのものって、表紙から静かに始まって、クライマックスが真ん中にあって、最後に社長の概要説明とかで締める。でも、今は情報の概念自体が変わっているので、構成は逆になります。つまり情報として読む価値のあるものが最初、その後で詳細のデータ、載せきれないものはウェブへ、という流れですね。

長谷川:最近は何の会社かすぐにはわからないような複合的な会社も多いと思うんですが、そういった会社の場合、理念とか抽象的なことがたくさん書いてあるけど、読んでもよくわからない。ビジョンはあってもきちんと表現に落とし込めていないんですよね。即物的すぎると思われるような表現になるんだけれど、具体的に見せることをしないとだめで、そしてそれをウェブならトップ、紙なら最初のページに置く。大事なことから言うべきで、ファクトシートとかそういうことはどこかにありさえすればいい。こういう提案には慣れていない方が多くて、いざ原稿を作るとなると、元にすべき素材や表現がなくて戸惑うのですが、これまで、いかに人から見られるアプローチをしてこなかったかに気づいていただけることが多いですね。

ウジ:デザインを戦略的に使ってもらうことにより、しあわせになれる小さな企業は日本中にたくさんあると思うんです。今はまだ小さな動きですが、今から少しずつ種をまいて、デザインという戦略事業が日本全国で育っていくことが必要だなと感じています。広告デザインではなく、広義のデザイン事業について、多くの人にその可能性を伝えるべきだと思うんです。
私の持論なんですが、セミナーなんかではデザインは問題解決と潜在意識と未来想定(未来創造)だとお話ししています。だから、多数決や鶴の一声で、デザインの案を採決してしまわないでくださいね、って。
今回は、特にデザインでの問題解決についてお話しさせていただきましたが、デザインには、本来形になっていない、もやもやしたまだ形になっていないものを具体化するという役割もあると思うんです。

長谷川:それは欧米では、デザインシンキングという考え方で広まりつつありますね。デザインをするときにリサーチをするとかプロトタイピングをするとかそういったことがあると思いますが、それをビジネスにも取り入れていこうということです。

ウジ:デザインシンキング!話が尽きませんね。IAのお話ももっと聞きたかったし。では次の機会には、デザインは未来創造といった方向でお話したいですね。




(2010年10月 amuにて収録。)






―デザインマーケティングカフェより「デザイン思考とデザイン戦略」トークイベントのお知らせ―

f0165451_15325548.jpg「デザイン×ソーシャルメディア」「デザイン×ブランドアイデンティティ」に続く、デザインマーケティングカフェの第3弾に、amuディレクターであり、日本を代表するインフォメーションアーキテクトの長谷川敦士がゲストとして登場します。「デザインで問題を解決しなければ」と言う共通認識が出来たところでさらにその根底となる「思考」「戦略」とは何かに迫ります。
ウェブ制作やビジネス、経営に直結して使える「デザイン思考とはなにか」に始まり、ビジネスに有効な「デザインの考え方」について、トークショースタイルでリラックスムード高めながら、デザインの戦略立案に絡めた、濃密かつデザイン指数高めの知的デザイン体験をお楽しみください。
既に満席でしたがvoiceをお読みの方にもご参加頂けるよう、5席増席いたしました。お誘い合わせの上、多数ご参加ください。お早めのお申し込みを!


【日時】2011年01月12日(19:00開場 19:30~21:30)
【開催場所】インターナショナルデザインリエゾンセンター(六本木ミッドタウン/デザインハブ内);東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー5F
【参加費】5,000円(税込/懇親会費込)

※当イベントは終了しています。