EVENT REPORT

フィルターバブルの破壊と再生 1/2 松浦茂樹
――World IA Day 2016 Japan(Tokyo) vol.3

【プレゼンター】松浦茂樹

EVENT REPORT

フィルターバブルの破壊と再生 1/2 松浦茂樹
――World IA Day 2016 Japan(Tokyo) vol.3

【プレゼンター】松浦茂樹

World IA Dayは2012年にスタートした全世界同時開催のIA(情報アーキテクチャー)のイベントです。今年は世界、6大陸、28カ国、57都市で同時開催されました。2016年のグローバルテーマは「Information Everywhere, Architects Everywhere」、そして日本では「いまフィルターバブルを考える、これからのIAの役割とは」とローカルテーマを題してさまざまなプレゼンテーション、議論が行われました。ログレポート第三回は、松浦茂樹氏によるプレゼンテーション「フィルターバブルの破壊と再生」の前半をお届けします。

※このセミナーは2016年2月に行われたもののため、文中の数字やサービス構造等に関しては、最新ではない可能性がございます。

OVERVIEW

2016.02.20(土)

プレゼンター:
松浦茂樹(メディアコミュニケーションディレクター)

INDEX

  1. 破壊と再生の経緯
  2. SmartNewsのスタンス

破壊と再生の経緯

「フィルターバブルの破壊と再生」という物騒なタイトルではございますが、お話させていただきます。まず簡単に自己紹介しますと、私はもともとはエンジニアでして、20代はメディアと無関係な人生を歩んでいました。ネットメディアのキャリアをスタートしたのは、ライブドアに入ってからです。2011年にはWIRED、2012年はGREEで新規事業を主に担当しました。そして2013年にハフィントンポスト日本版創刊の編集長を1年半ほど担当し、2014年の9月にSmartNewsに入社しました。

これまでの編集長という肩書きから誤解されがちですが、本質的にはビジネスサイドの人間で、ライブドアでも全体的なマネジメントを担っていました。こうしたビジネスサイドの視点も交えて、お話していきます。

まず現在のSmartNewsの概要ですが、媒体プロフィールとしては、インターネット上のありとあらゆる記事をお届けする、国内最大級のニュースアプリという形でアピールしています。エンタメ・グルメ・スポーツ・国際・テクノロジーやバズ的なまとめなど、幅広い話題を扱っています。月間アクティブユーザーは約500万人、デイリーアクティブユーザーが約200万強(数字は発表当時)というのが、われわれの現状の立ち位置です。
さて、私はフィルターバブルは実は一度壊れたと考えているのですが、そう考えるに至った経緯をお話しましょう。

SmartNewsには、Crowsnestという前身のサービスがありました。社長である浜本が個人で開発して2011年にスタートしたのですが(2015年7月に終了)、Crowsnestはまさに、フィルターバブルの真正面をいきました。「自分が使って便利なものを」と銘打って、各ユーザーのTwitterの情報をもとにした、完全にパーソナライズ化したニュースリーダーというサービス内容でした。ただ実際のところ、サービスとして大きく伸びることはできませんでした。自分ではすごく便利なんだからみんなに使ってもらえるだろうと、UI、UXともに緻密に設計しましたが、全然使ってもらえなかった。その反省と分析をもとに生み出されたのがSmartNewsです。

SmartNewsについて話す松浦茂樹さん

SmartNewsでも、ユーザー自身のソーシャルアカウントをSmartNewsと連携させる機能は残しています。しかし、CrowsnestからSmartNewsへの移行で、フィルターバブルを意図的に一度破壊したというのは、私としては非常に大きかったと考えています。

SmartNewsのスタンス

Crowsnestでの反省と、フィルターバブルの破壊を経て、現在SmartNewsをどのような考えのもとで運営しているのかを、お話していきます。先ほど櫻田さんから「インフォグラフィックは、データを集めて、分析して、それを編集して最終的にプレゼンテーションするというフローでつくる」というお話がありましたが、SmartNewsもまさに同じフローでコンテンツ制作を行っています。

まずデータ収集の観点でいうならば、SmartNewsはコンテンツをたくさん集めなければいけません。冒頭でお話したとおり、数多のコンテンツをお届けするサービスですから、まずはコンテンツのつくり手を尊重するという形で、とにかく多種多様なコンテンツを収集します。このコンテンツ収集には、フィルターバブルは関係ありません。SmartNewsではオリジナル記事をつくりませんので、良質なコンテンツのつくり手、メディアパートナーの存在なくしては、成立しません。私はメディアコミュニケーションディレクターという肩書きを持っていますが、私のミッションはまさにここです。メディアコミュニケーションとは、コンテンツのつくり手と密にコミュニケーションを図って、多くのコンテンツを集めてくることです。最初のこのコンテンツ収集がなかったら、フローの最後のプレゼンテーションはできませんよね。

SmartNewsについて話す松浦茂樹さん

コンテンツ収集についても、さまざまな論点があると思います。まず、だれがつくったのかということ。SmartNewsのトップページには、新聞社・テレビ局・雑誌社・ネットメディア、これらの記事が混在しています。でも、大手メディアだけでなくブロガーも入っています。つまり、つくり手がだれなのかは問題とせず、とにかく情報といわれるものを、できるだけ多く収集することが大事だと考えているのです。大手メディアがつくっている、テレビ局がつくっている、その時点でフィルターがかかってきますので、つくり手を気にせず情報を集めてきます。

その上で、良質な情報を選び取っています。この枕詞の「良質な」ですが、なにをもって良質なんでしょう? 良質っていうのは、人それぞれだと思うんです。そのため、会社として「良質」の定義は持っていません。私個人の答えとしては、良質な情報とは、もう一つの良質な情報を連れてくるものだと思っているんですけど、ただ、それぞれみなさんにおいての良質というところはある。その可能性を否定しないために、まずデータとしてはとにかくあらゆる情報を集めてくることが重要です。可能性があるコンテンツはすべて可能性を残すというスタンスでいます。

(2016年2月20日@amu)

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【そのほかのプレゼンテーション、ディスカッション】

  • 櫻田潤氏、松浦茂樹氏、坂田一倫氏、長谷川敦士氏:

1/6 メディアの信頼性を模索する
2/6 メディアの責任とは
3/6 コンテンツの役割と設計倫理
4/6 フィルターバブル時代を生き残るためのリテラシー
5/6 情報の倫理
6/6 IAの役割

amu

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