EVENT REPORT

不完結な場 1/3 岡田美智男・江渡浩一郎・若林恵・大林寛
――World IA Day 2015 Japan vol.3 パネルディスカッション

【スピーカー】岡田美智男、江渡浩一郎、若林恵

【モデレーター】大林寛

EVENT REPORT

不完結な場 1/3 岡田美智男・江渡浩一郎・若林恵・大林寛
――World IA Day 2015 Japan vol.3 パネルディスカッション

【スピーカー】岡田美智男、江渡浩一郎、若林恵

【モデレーター】大林寛

2015年2月21日(土)にWorld IA Day 2015 東京がamuで開催されました。グローバルテーマは「Architecting Happiness」。東京では「身体性」というキーワードでトークやパネルディスカッションが展開されました。レポート第3弾は当日の発表者の岡田美智男、江渡浩一郎に、『WIRED』日本版編集長の若林恵とモデレーターとして大林寛が加わったパネルディスカッションの様子を3回に分けてご紹介します。

OVERVIEW

2015.02.21(土)

スピーカー:
岡田美智男(豊橋技術科学大学 情報・知能工学系 教授)、江渡浩一郎(独立行政法人産業技術総合研究所主任研究員/ニコニコ学会β実行委員長/メディアアーティスト)、若林恵(『WIRED』日本版 編集長)
モデレーター:
大林寛(株式会社OVERKAST代表)

INDEX

  1. 関係をつくりだす《弱さ》
  2. 部分身体としてのロボットからわかること

関係をつくりだす《弱さ》

大林:江渡さん、岡田さんありがとうございました。それから若林さんもよろしくお願いします。

まずはぼくの方で感じたことをお話できればなと思います。岡田さんのテーマが《弱い》ということで、江渡さんの方は「ニコニコ学会β」と「研究してみた」というワードがその弱さ、敷居の低さみたいなものを表していると思うんですが、そのあたりでお互いのプレゼンテーションを聞いたときに共感するところがあればお聞かせください。

江渡:岡田さんのプレゼンについては「いやあ、これは勝てない」というのが率直な感想ですね。近年稀にみるほどのおもしろいプレゼンでした。ぼくが考えていたことに近いというと僭越な言い方になってしまいますが、非常におもしろいですよね。ロボットといったときに、もともと想定されているさまざまな機能から本当に必要なことはなんなのか、そぎ落として考えていくという、《引き算のデザイン》って言葉がありましたが、それに正面から取り組まれていて素晴らしいと思います。研究者としては負けたって感じですかね(笑)。

大林:ぼくは、そもそも自分がロボットというものに対して、目的合理性みたいなイメージを持ってしまっていたことに気づかされました。人間として見るというわけではないと思うんですけど、《弱い》というアプローチで、ロボットのまた違う見方があるんだな、というふうに感じました。たぶん、生き物に近い感じとかだと思うんですが。ロボットには感情がないはずだけど、なんか感情移入しちゃうというところがすごく大事なのかなと思いました。

江渡:たぶん、どんなレイヤーにおいても岡田さんの視点はすごく重要だと思うんですよね。たとえば、100円ショップダイソーの社長のインタビューがすごくおもしろくて、「ウチの会社はこんなに弱いんです、こんな負債があって、明日にも潰れそうなんです」みたいなことを話していて、あー、この社長わかってるなって思ったりとか。

panel

ちょっとテーマに寄せると、iPhoneSiriってありますよね。あの人工音声は意図的にちょっと機械っぽくなっているんです。つまり、技術的にはもうすこし自然な発音ができるんだけど、自然な発音になりすぎないようにしていると聞いて、なるほどと思いました。

大林:そうですね、関係のデザインと、関係が発生する余地を与えるところがおもしろい気づきだなと思いました。江渡さんのプレゼンでも同じような余地というか、敷居の下げ方というかそうしたことは、ニコニコ学会βやインターネット物理モデルなどに確かに一貫してあるものだと思いました。集合知とかもその間に入ってきて、そこの見えなかったつながりというものがなんとなく見えてきたなと思いました。

部分身体としてのロボットからわかること

大林:次に岡田さんに質問してもいいですか。《設計的構え》と《志向的構え》というものがあって、これは思い切り《設計的構え》な質問なんですが、岡田さんの方で《弱さ》っていうのを設計しているわけじゃないですか。そのときに、《弱さ》の調整みたいなものを計測をしているのか、それとも直感的な印象で決めているのか、そのあたりを聞きたいなと思いました。

岡田:「弱さをデザインする」って考え方もあるけど、ぼくは、ぼくらの身体が持っている「究極の弱さ」みたいなものに近づきたいと思っているだけなんですよね。《弱さ》の加減をデザインするというよりは、できるだけそれに近づいてみたい。いろんな試行錯誤をやっているだけなんじゃないかなと思っています。場合によってはデザインするって考え方もあると思うんですけど。

大林:そうですね。実際にすでになにかつくられているのでそういう考え方があるのかなと思ったんですけど、やっぱり「関係をデザイン」するというところに近いんですかね。

江渡:いまのお話でもうすこし詳しく聞きたいんですが、当然のことながらロボットをロボットとして素直に設計すると強くなっちゃうというか、仮に弱くなったとしてもロボットとして弱くなる。上手く動かない、もしくは、乱暴に動きすぎる、もしくは、痛い、とかになっちゃうんですが、人間らしい《弱さ》を演出するためにはそれなりの工夫があるわけですよね。人間らしい《弱さ》を抽出して、それをロボットに与える、ということをなさっていますよね。人間らしい《弱さ》をどう抽出しているのかぼくは知りたいです。

panel_okada

岡田:抽出というよりは、ロボットを使った研究のおもしろさとして、全人格的な身体を最初からすべて扱う必要はないと思っています。たとえば、目玉1個だけでも、あるいは、歩くということだけでも部分的な取り出しをして、そこでいろいろ議論できるところがおもしろいかなと思っているんですよね。人によってはヒューマノイドっていうロボットを使って全人格的な議論を行うことがありますが、ぼくらは最初「目玉だけのロボットをつくってみよう」とか「発話だけのロボットをつくってみよう」とか、あるいは「フラフラ歩くだけ」とか。そういうある側面だけの中で、われわれヒトなり生き物なりの身体が持っている弱さの部分だけを上手く抽出できればいいな、というアプローチなんです。

大林:目はやっぱり大事なんですか?

岡田:……うん。《志向的な構え》を引き出す上では、ぼくらは生き物がいまどこに注意をあてているのかというところを気にするものなわけですから、そこさえあれば《志向的な構え》を引き出すことができるかもしれないなってことはあります。

大林:あとは、ちょっと感じたのは不完結性でしたっけ。不完結性が赤ちゃんの話にも出てきましたが、引き算というのが対抗している、発達的に対抗している感じなのかなとすこし思いました。

岡田:発達的に対抗しているというより、着目の仕方として、言語を使ったコミュニケーションもあるけど、もっと原初的コミュニケーション(proto-communication)もあるんですよね。赤ちゃんと母親の間で身体を基盤にしたコミュニケーションだとか、相互の成り込み*1とか共同注意とか共同注視*2、そういう基本的なところをおさえることができればそれは対抗ではなくてたぶん原初的なところのベースに戻るということだと思います。

大林:なるほどなるほど。

岡田:そこをおさえれば、あとはどんどん言語をつけるとか、身体的なモダリティ*3をつけるとか、ということになると思うんですが、一番削ぎ落としたところがどこにあるのかってのは見極めたいなと思っているんですよね。

大林:なるほどなるほど。あとはわれわれの業界でもよく「アフォーダンス*4」って話がよく出たりするんですけど、一歩踏み出す《投機的行為》、一歩踏み出すときの不安さみたいなのがあって、それに対しての《グラウンディング》っていうのは普段デザインを考える上でいろいろヒントがありそうだなと思いました。

岡田:そうですね、身体が持っている《不完結さ》をとりあえず外に繰り出してみないと意味が見つからないので、その意味を見つけるまでのちょっとした間の小さなドキドキというか、それらがいろいろ重なっていると思うんですよね。ぼくらも最初にメールをネットワークに投げるときとか、クリックするときにちょっとドキドキしますよね。「どうなってしまうかわからない」というある種の《不完結さ》というのがあって、向こうからなにかが返ってくるとホッとして安心する。そのドキドキがちょっとした場をつくっている、そういうおもしろさがあると思うんですよね。

———————————————

*1 成り込み 親が子どもの感情の側に入る込み、子どもに感情に同調した状態。機嫌のいい乳児に「うれしい、うれしい」と話しかけるなど、子どもが発話すべき内容を母親が代弁する行為。

*2 共同注意、共同注視 乳児が大人に見て欲しいものを指さす行動など、自分の注意の所在を他者に理解してもらうこと、また他者の注意がどこにあるかを理解し共有することを共同注意と呼ぶ。共同注視とは他者の視線の向く方向に自分も視線を向ける行動。行動注視から共同注意へと発展するといわれている。

*3 モダリティ  視覚や聴覚、触覚といった感覚の種類と、「目で見る」「耳で聞く」といったような、それぞれの感覚受容器を通した体験のこと。

*4 アフォーダンス ジェームス・ギブソンが提唱した概念。環境や物質は人間や動物にとって、単なる物質的な存在ではなく、直接的に意味や価値を提供(アフォード)するものという考え。ごつごつした岩場には横にならないが、芝生の上では横になるなど、環境を捉えるときに、行動を促進させたり、制限させたりするような特徴を読みとっている。

———————————————

今回は岡田さんの発表をもとに登壇者それぞれの観点から関係がつくられる場についての話題となりました。これに続く次回は、若林さんも登場し、さらに議論は広範囲なものに展開します。

パネルディスカッションの続きはこちらから。

【関連リンク】
・World IA Day 2015 Japan 公式サイトはこちら
・World IA Day 2015 Japan の動画はこちら

こちらもあわせてお読みください。

【World IA Day 2015 Japan レポート】
プレゼンテーション

オープンディスカッション
岡田美智男氏、江渡浩一郎氏、若林恵氏、長谷川敦士氏

amu

未来を編む

「デザイン 」 関連の記事を
もっと読む