EVENT REPORT

食に向き合うーー「今日のごはんがつくるもの」レポート2/2

【ゲスト】MIHO

【聞き手】千々和淳

EVENT REPORT

食に向き合うーー「今日のごはんがつくるもの」レポート2/2

【ゲスト】MIHO

【聞き手】千々和淳

「いま食べているものが、10年後のあなたのカラダをつくる」をコンセプトにしたフードマガジン『saji』を創刊し、日本とパリとでさまざまなフーディングなどを行うフォトグラファーMIHOさんをお招きして、いまの私たちを取り巻く環境と未来の自分を「食」という視点で考えるイベントを開催しました。
当日は、MIHOさんとコラボレーションすることも多い、代々木上原の按田餃子さんのお料理を味わいながら、今一度自分の「食」を振り返る場となりました。後半は、MIHOさんが実際に暮らして感じたフランスと日本の食文化の違いや、今気になっているという、暮らしと切り離せないゴミの話などをうかがいました。

OVERVIEW

2016.02.05(金)

ゲスト:
MIHO(フォトグラファー)
聞き手:
千々和淳(amuコンテンツディレクター)

INDEX

  1. フランス人が丁寧に暮らせる理由
  2. 暮らすことと切り離せない「ゴミ」の話
  3. 日本とフランスの「食」に対する向き合い方の違い
  4. ちょっとしたことを丁寧に考えてみる

フランス人が丁寧に暮らせる理由

千々和:前半では国内外のイベントに幅広く携わったり、『saji』をつくるお話をうかがってきました。そういった活動の中で、その食文化における違いは実感されましたか?

MIHO:食文化についての比較はよく聞かれますね。日本にもフランスにもそれぞれいいところがたくさんありますが、あまりにもその環境が違いすぎて比較ができないというのが本当のところです。しいて言えば、日本は生活のすべてが便利になっていても、意外と毎日違う献立を食べていますよね。それって意外と面倒くさい。でも、逆にフランスはほとんど毎日同じごはん食べてるんじゃないかっていうくらい。サラダとかクスクスとか。日本の食の歴史をみると、やはり途中からアメリカの食生活が大きく関わってきたりと、両国とも重ねてきた食の歴史はまったく違う国なので、比べづらくはありますけどね。お互いのいいところを交換し合えば、よりいいのになと思います。

千々和:MIHOさんから見て、日本のいいところってどういうところですか?

MIHO:美味しいし、接客もいい。フランスには日本のような丁寧な接客文化ってそんなにないんですよね。でもそれは文化の違いだから、そうしろとはまったく思わないですけど。あと、食材に関して言うと、お金を出せばやはり良いものは買える。一方で、安くて何を使っているのかわからないようなものも多いですよね。そういうことをケアできるようなシステムができてもいいんじゃないかなとは思います。

千々和:amuでも「食」に関するイベントを開催していますが、最近の日本は「食」がブームですよね。食に対する意識ってもともと日本人は高いと思うんですけど、一方で、ジャンクフードの登場率もやっぱり高かったりする。仕事が忙しくてごはんのことまで考えられない時はコンビニで適当に済ませてしまったり。でも、そうして適当に食べたものって覚えてないんですよね。コンビニの少ないフランスとはまた事情が違うと思うんですけど。MIHOさんから見て、日本の食生活の問題点ってありますか? 希望的観測も含めてお聞きしたいです。

MIHO:日本は食に対するリテラシーに関してどんどん格差ができていて、一概に「こうした方がいい」とは言いづらい社会になってきているのは事実ですね。昔よりも共働きの夫婦が増えて、時短で冷凍食品を使うのももはやスタンダードになってしまっているので。同じ時短でも、テレビをボーッと見ている時間に野菜を下ゆでしておく、という方向にシフトできたらいいですよね。まぁ、社会に変わっていただくのが一番ではありますが……。

会場:

MIHO:本当に。給料が下がっていくのに税金が上がっていくのは、食というより、生きていくことに関わりますから。フランスは野菜が安いんですよ。生きるために必要なものにお金がかからない。野菜だけじゃなくて、電気代も電話代も安いです。一方、冷凍食品やジャンクフードがとにかく高い。マクドナルドで比較すると、日本で100円で買えるようなものが数百円するんですよ。時短を理由に安易で安価なものを選ぶ人の気持ちもわかるので、もっと生きるという根本的なことにゆとりがもてるような社会を作って、みんなが意識を変えていかないといけないですよね。悪いところを一つ直すだけでは、あまり意味がない。

MIHO

暮らすことと切り離せない「ゴミ」の話

千々和:納得です。そんなMIHOさんの思いを踏まえて、今後やっていきたいことや、すでに取り掛かっていることはありますか?

MIHO:ずっとやりたいなぁと思っているのは、ゴミの本を出すことです。常に私たちってゴミを出しているし、ゴミを出すことでも経済が生まれているじゃないですか。その「捨てる」っていうことについて考えています。

千々和:食べ物の次にゴミというと、なんとなく繋がっている感じはしますね。

MIHO:そうですね。たとえば、髪の毛もここ(頭)についている時はゴミじゃないのに、抜けた瞬間にゴミになる。これって不思議じゃないですか?「ゴミっていつからゴミになるんだろう」っていうのを、考えだしたら止まらなくなってしまって。それから、世界のいろいろなところへ行くたびに写真を取るようになったのですが、それぞれにすごく特徴があることに気付いたんです。このフランスの写真とか、信じられないでしょう?

フランスのゴミ

千々和:これは凄いですね。

MIHO:最近はここまでではないようですけど、これを見たのは8年くらい前です。ここに捨てられているものって、言ってしまえばまだ食べられる。私もたまにゴミを拾ってみたりしましたよ(笑)

千々和:これはちょっと尋常じゃない。東京にあったら大変なことになりますよね。

MIHO:フランス人が捨てたゴミを片付ける人がいるんですけど、彼らに言わせると、そういう人たちのお仕事をつくってあげてるんだって。

千々和:なるほど、とは言いづらいですね。ゴミの問題はいつか『saji』でも取り上げてほしいです。

日本とフランスの「食」に対する向き合い方の違い

千々和:春ぐらいをメドに『saji』6号を制作中とのことですが。

MIHO:実は「6号」にせずに、子ども向けの『saji』を初めてつくっているんです。

saji_for_kids

現在発売中の『saji for kids』。プロモーションビデオはこちら。https://www.youtube.com/watch?v=vKk4pyuN7cc

千々和:じゃあいつもとはだいぶ違う感じになりそうですね。

MIHO:ぜんぜん違うと思います。子どもとお父さんとお母さん、みんなで読んでもらいたい、お子さんも食べられる料理の特集です。たとえば、子どもが嫌いなピーマンを食べたくなるくらい美味しそうに料理するの。

千々和:なるほどね。さて、ここからは皆さんからの質問も伺っていこうと思いますが、最初に僕から一つ。先週、MIHOさんと一緒によく仕事をしているGomaさんから、食べ物を用いたイベントやワークショップで「食べ物を粗末にするな」っていう声をいただいたそうで。見方によっては食べ物で遊んでいるようにも見えてしまうので、結果的にそういう感想を持たれる方がいたようですが、MIHOさんのアートワークやイベントそのものに対してそういう声が届いたことってありますか?

MIHO:無いですね。基本的に食べ物は絶対に捨てたくない。

千々和:「食」を大切に思うことが根底にあってのイベント・ワークショップだということを伝えていくのも、大事ですね。では、どなたか質問ある方はいらっしゃいますか?

参加者:ありがとうございます。まず、男性の目線からの質問なのですが、世の中のお父さんが食の教育を自分の子どもにするうえで、何を心がけたらいいでしょうか?

MIHO:日本のお父さんっていっぱい働いているから、お子さんと関わる時間が少ないですよね。だから「一緒に食べる」という時間をつくることから始めるといいかもしれません。仕事でそうもいかない日もあるかもしれないけど、少しだけ早く帰る時間を増やしてあげるとか、夜の帰りが遅かった時は朝少しだけ早起きして一緒にいる時間をつくるとかね。それをお父さんたちが「こうしなきゃ」と強迫観念的に思わずに、ごく自然の流れでできるといいですよね。

千々和:逆に、お父さんたちが自分の食生活を見直す時に心がけることって何ですか? まず最初にやるべきことというか。

MIHO:朝と夜は大体奥さんがごはんをつくってくれるでしょうから、お昼に限定して言うと……外食が多いと思うのですが、食べる順番は気にかけてほしいですね。油物がメインの定食だったら、お味噌汁から食べる、みたいな。それだけでもすごく変わると思います。

千々和:少し話はそれますが、MIHOさんの個性的なイベントのアイデアの源泉ってどこにあるんですか?

MIHO:最初に「こういうのでお願いします」と言われることが多いので、そこから考えることが多いですが、やはり日本とフランスを行き来して得た視野が糧になってる部分は大きい。フランスだけでも町中に溢れてる文化が自然とアイディアにつながることもありますね。

MIHO

千々和:ありがとうございます。次の質問、どうぞ。

参加者:日本とパリの2拠点で活動されている理由はなんですか?

MIHO:明確な理由があったわけではないです……すみません(笑)。10年近く日本とパリを行ったり来たりしていたのですが、パリで働く時間が徐々に増えてきた時に大使館の方にチクリと言われて、日本との滞在バランスを気をつけたり。本当にそんな理由なんです。

千々和:10代の頃パリに憧れたり、パリに行きたいと思っていたとかは?

MIHO:……ない(笑)。パリと同じように、NYに10年近く行き来していた時期があったのですが、さすがにいろいろなものの流れが早くて、腰を据えて何かを始めるには不安だったんです。その時から『saji』をつくる構想はあったのですが、日本では受け入れてもらえなくて。どうしようって行き詰まった時に「食といえばフランス!」とシンプルに導かれましたね。それで、すぐにフランス語を習って行ってみたら、全然通じない(笑)あまりに通じなくて、しまいには「英語で話せ」って言われて、英語で話す始末。うまくいかない内はフランスが好きになれなかったんですけど、救いの手を差し伸べてくれる人がだんだんと現れて、自分も自分の周囲も少しずつ変わりだしてから、少しずつ好きになっていきました。やっぱり一番好きなのは日本ですけどね。

千々和:あ、そうなんですか。

MIHO:うん。こんなにいい国はないと思ってる。

千々和:他にご質問がある方はいらっしゃいますか?

参加者:フランスのライフスタイルや食のスタイルで、日本人が取り入れたら心がもっと潤うんじゃないかっていうことや、そんなエピソードがあれば教えてください。

MIHO:日本だと、家に人を呼んでパーティーなんてしようものなら大変なことになりませんか? 布団干して、掃除して、気合い入れて料理!って(笑)フランスはいい意味で肩の力が抜けているんですよね。「みんなでごはん食べようよ」って集まることになったら、日本だったら「何を持っていったらいい?」っていう話し合いから始まるじゃないですか。フランスでは、飲み物係と食べ物係くらいにざっくり決めて、あとは自分が食べたいものを持っていく。そういうのを見ていると、日本はもっと気楽にしていいんじゃないかなって思いますね。

千々和:日本だと、呼ばれて嬉しい反面、気疲れするよね。

MIHO:そう。あの人何が好きだろう? 日本酒かな?って。

千々和:何人かで集まった時、持っていったものが人とかぶっちゃった時の気まずさとかね(笑)。

MIHO:そう。日本の食のスタイルがそれだけ多様化してるってことでもあるんですけど。フランスって日本みたいに食が多様化してないしてないから、大概ワインしか合わないんです。だから、迷うこともなくて本当に気軽。

MIHO

千々和:他に質問はありますか?

参加者:先ほどフランスの食育のお話がありましたが、好き嫌いの多いイメージのある日本と比べて、フランスではどうですか?

MIHO:細かいところはわかりませんが、好き嫌いはありますよ。大人になっても野菜を一切食べない人とか。国が対策を立てるレベルなので、もしかしたら日本よりもひどいかもしれないですね。フランスでは食育として子どもを畑に連れていって、そこで摘んだとれたてのものをそのまま食べて「これが苦いっていうおいしさのひとつなんだよ」って教えるんです。これで子どもたちの好き嫌いはだいぶなくなったって国は言うんですけど、実際は野菜が嫌いな子が多いですね。
個人差はあるけれど、フランスって日本みたいに肩肘張って「いいものを子どもに食べさせなきゃ」っていうのはあまりなくて。ただ、その気張らない感じとは裏腹にビオショップが街に溢れてる。スーパーマーケットの他にですよ? 日本から見た意識の高さっていうのはフランスの日常なんだなって感じますね。

千々和:面白いですね。他は、大丈夫でしょうか?

ちょっとしたことを丁寧に考えてみる

参加者:ゴミのお話について、人間が普通に暮らすことがゴミを出すことに繋がっているというところに興味があります。それを問題意識として捉えつつうまく付き合っていく方法など、MIHOさんのお考えを伺いたいです。

MIHO:どうすれば良くなるかって本当に難しい問題なんです。なぜなら、ゴミはリサイクルのことを考えると経済の一部としてあるものですからね。身の回りにいかに「ゴミ」があるか認識することが大事な気がします。極端な話をしてしまえば、トイレを流すときはボタンひとつで流れていきますよね。でも、その後のことを考える人はほとんどいない。いわば、無責任な生き方をしているわけです。ゴミを出すというのはどういうことなのか、その先のことまで考えてみるといいかもしれないですね。あと、やっぱり私はフランスで生活する中で「どこからがゴミなんだろう」って思うようにはなりました。

MIHO

おいしそうなカップケーキが落ちていたら、誰かの忘れ物なのかもしれないっていう選択肢も出てきますよね。たまに、道にみかんがポロっと落ちてたりしませんか?(笑)

千々和:たまにあるよね(笑)

MIHO:目に入ったものが本当にゴミなのか、忘れ物なのか、落し物なのか、そういうちょっとしたことを丁寧に考えることで社会が変わる気がするんです。ゴミをまったく出さないというのは経済の一部分が欠落してしまうという意味で難しい話になるのですが、ゴミを減らすという暮らしについては考えていきたいですね。

千々和:すべての話がつながりましたね。食べることにも、物を扱うことにも、丁寧に向き合うことで、生きることに豊かさというエッセンスが加わる。MIHOさんのお話をうかがって、それらの視点というのは同じところにあるんだなと思いましたね。それでは、トークはこれで締めさせていただきます。このお話をふまえて、「按田餃子」さんの餃子を味わいましょう。

andasan

gyouza

 

(2016年2月5日@amu)

レポート前半はこちらです。

amu

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