EVENT REPORT

こどもメディアラボ vol.9
――こどもと建築

【ゲスト】日比野拓 

【聞き手】石戸奈々子

EVENT REPORT

こどもメディアラボ vol.9
――こどもと建築

【ゲスト】日比野拓 

【聞き手】石戸奈々子

2015年12月8日、「こどもメディアラボ vol.9 ――こどもと建築」を開催しました。当日のトークの内容をレポートします。

OVERVIEW

2015.12.08(火)

ゲスト:
日比野拓 (株式会社日比野設計 取締役専務兼幼児施設担当統括責任者)
聞き手:
石戸奈々子(NPO法人CANVAS理事長、株式会社デジタルえほん代表取締役、慶應義塾大学准教授、amu代表)

INDEX

  1. 「こどもと建築」

「こどもと建築」

子どもとメディアの関係を総合的に考え、新しい価値を生みだす、「こどもメディアラボ」。第9回のテーマは「こどもと建築」。ゲストに、数多くの幼児施設を手掛け、子どものみならず世界中の人びとを魅了してきた「日比野設計+幼児の城」の日比野拓さんをお招きしました。

まず日比野さんから紹介いただいたのは「ワクワク・ドキドキ」という言葉。これは日比野さんが仕事をするうえで大事にしている言葉です。「こども」と「安全性」は切っても切り離せない関係にありますが、同時に「安全である」ということだけが大事ではないと日比野さんは考えます。子どもの好奇心に大人が歯止めをかけるのではなく、つねに子どもの「楽しい」という感覚を大事にしたい。幼稚園や保育園は子どもたちがただ日常を過ごすだけではなく、大人になるために学ぶ施設です。実際に日比野さんの設計された施設を見ながらその言葉の意味を深堀りしていきます。

園舎の事例として、日比野さんご自身が手がけた施設や、海外視察の様子までたくさんの子ども向け施設を紹介いただきました。

世界45か国でシェアされたという熊本県にある園舎の中に水たまりのできる幼稚園。都市部に建つ幼稚園周辺の道路は舗装されており、昔のように道路の水たまりで遊ぶことは少なくなりました。雨が降ったら水たまりができ、そこに足をバシャッと入れて遊ぶ。雨との楽しい思い出を今の子どもたちに届けたい。そんな日比野さんの想いが詰まった遊び心満載の幼稚園は、雨の日に子どもたちにワクワク・ドキドキ感を届けます。

福島にある幼稚園では、未だに原発の影響で子どもたちが外で遊べない場所もあります。室内で長く過ごすことは園児の肥満化や運動不足につながります。生活環境を改善するためにはどのような園舎が必要か。辿り着いた答えは、外でできることを中でできるようにすることだったと言います。幅を広くした全長40mの廊下は子どもたちが思い切り走りまわれる場所へと変身しました。園舎内にはプールや砂遊びができる場所もあります。雨の日でも一年中遊べる空間では、子どもたちの笑顔がつねにあります。

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台風のメッカでもある沖縄は宮古島の幼稚園。風が強いと空間が閉塞的になりがち。しかし、台風はいつもくるわけではない。晴れの日にどうやって沖縄のよさを実現するかを考えて取り組んだ事例です。大きな窓をつけて開放的な空間をつくり、台風の日はそれを防ぐための強い網戸のような素材を簡単にセットできる様に工夫しました。日比野さんは、これまでに関わったプロジェクトの中でも1、2を争うくらい素敵な園になったと言います。それは、建築のよさだけではなく、建築と運営の両方が素晴らしかったから。園長先生の熱意やスキル、保護者のおおらかさや子どもたちの積極的なコミュニケーションは施設をつくる上で大事な要因となります。

講演の後半は施設づくりの考え方についてお話いただきました。大事にしているのは「失敗は成功のもと」と同時に「けがは成長のもと」であるということ。子どもにとっては危ないと感じる環境は、子どもたちが自分の行動に責任を持つことを教えさせてくれる環境でもあります。

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たとえば「段差」。一見危険なイメージが強いが、本を読むスペース、舞台としても使えます。子どもが段差を飛べたことで達成感を得ることもできます。それから「素材」。実は一般的な園舎で使われる素材には本物に見せかけた偽物の素材を使われることが多いそう。一方で日比野さんの考えは、木は腐る、鉄はさびる、ガラスはわれる、という自然なことを子どもたちに伝えたいと思い、幼稚園の遊具にあえてピカピカの塗装をしない木材を使用することもあるとのこと。

これからも大事にしたいのは「子どもたちの好奇心を奪わない」「失敗をおそれず挑戦していく」こと。園に合わせた園舎をつくり、建築を通じて子どもたちの育つ環境を総合的にデザインする日比野さん。これからも自身の原体験や子ども心を忘れず、子どもたちのワクワク・ドキドキを実現していきたいとお話いただきました。

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