EVENT REPORT

こどもメディアラボvol.11ーーこどもと建築2

【ゲスト】遠藤幹子

【聞き手】石戸奈々子

EVENT REPORT

こどもメディアラボvol.11ーーこどもと建築2

【ゲスト】遠藤幹子

【聞き手】石戸奈々子

子どもとメディアの関係を総合的に考え、新しい価値を生みだす「こどもメディアラボ」。第11回のテーマは「こどもと建築」。office mikiko一級建築士事務所代表、一般社団法人マザー・アーキテクチュア代表理事の遠藤幹子さんをお招きしました。当日のトーク内容をCANVASがレポートします。

OVERVIEW

2016.04.22(金)

ゲスト:
遠藤幹子(建築家)
聞き手:
石戸奈々子(NPO法人CANVAS理事長、株式会社デジタルえほん代表取締役、慶應義塾大学准教授、amu代表)

遠藤さんが大切にしている言葉は「創造力」と「遊び心」。大人も子どもも、みんな生まれながらに持っている力です。これらの力を花ひらかせ、誰かのために発揮し、みんなで共有できる場を提供していきたい、そんな想いで活動しているといいます。

遠藤さんは、一人ひとりの好奇心や創作意欲を喚起できる環境、それを実際に組み立て、構築できる環境、その成果をお互いに承認、普及し合うことができる仕組みづくりを、常に心掛けているそうです。そしてどんな時においても、「遊び心を喚起させる演出」は大事なキーワード。子どもたちの「遊び心」のスイッチをいれるために、実際にどのように実践してきたのか。実際に遠藤さんの作品を見ながら、その言葉の意味を深堀りしていきます。

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これまでに遠藤さんは、ミュージアム、子育て環境、コミュニティ・環境について実践してきました。なぜそれらに関わることになったのか。それは17年前にオランダでご出産、子育てをしてきた中で、オランダにおける公園等の公共物に、いいデザインや楽しい環境がたくさんあったことがきっかけだったそうです。一方、東京ではそれらのデザインが使われていなかったことから、ヨーロッパの素敵なデザインが上手く使われている子育て環境を、日本でもつくりたいと考えました。

リビングデザインセンターOZONEで行った「親子で楽しめるキッズコーナー展」では、ダンボールで箱をつくりブロックのように繋げて、表側には乗れて、中にも入れるという迷路をつくりました。その模型をつくっている様子を見ていた遠藤さんのお子さん(当時5才)が、実際にでき上がった空間で一通り遊んだ後、意外な反応が返ってきたとのこと。なんとお子さんはすごくカンカンになって、「ママ、だましたね。あんなに外にいろんなものが貼ってあって、中にはどんな世界が広がっているのかすごく楽しみにして模型を見ていたのに、何にもなかった。」という予想外の感想。そこで遠藤さんは、たしかに自分が中に入ったつもりだったけれど、見た目ばかり気にしていたということに気づかされたといいます。遠藤さんは現在も、つくってはこどもが遊び、その反応を聞く、というプロセスを繰り返しながら、子どもの遊び心が広がる空間を演出しています。

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来た人がアートに親しみ、来た人自身がアーティストになれる空間づくりを依頼されたのは、箱根の彫刻の森美術館の「Art Loop」。事前に遊び場づくりの活動をしている現場の方たちに、みんなの好きな物を聞いたところ、黒板と迷路だということ。全長100mの黒板の迷路をつくりました。この迷路には物語があり、彫刻の森の美術館の影がシュルシュルッと生き物になって飛び出し、イタズラをして遊んでいるイメージだということです。そのように遊び場をつくるときには、絵本のような物語を考えて空間をデザインしているそうです。この空間では、「不思議な世界+みんなが楽しんだ痕跡がその場に残っている」ことで、来た人がどこかの公園の迷路よりも、もう一段階、遊び心のスイッチが入るという発見があったそうです。

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その他にも、遠藤さんが小さいころ好きだった本を形にした、室内の公園「このもと展」、公園デビューを手助けする「プレイリヤカー」のデザイン、「いないいないばあっ!」のスタジオのデザインの話等、たくさんの事例を用いて、子どもたちの「遊び心」のスイッチをいれる演出・デザインについて説明していただきました。さらに、遠藤さんは毎年ザンビアでお産の施設を建てられています。その様子も動画でご紹介いただきました。

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建築家という枠を超えて今も精力的にご活躍されている遠藤さん。最後に、遠藤さんがこれまでの実践で大事にしていることを教えていただきました。それは、①世界観(空間を、非日常的な世界観で満たす演出)、②活動への没入(学びや創作の活動に夢中になれるための演出)、③立役者意識(「自分こそ立役者」という意識を強めてもらう演出)。これからも、国境や文化を越えて、多くの大人や子どもの創造力と遊び心を、巧みなデザインで花ひらかせていきます。

amu

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