EVENT REPORT

When Creative Meet Social Issues クリエイティブは社会問題に何が出来るか

【スピーカー】Waqas Jawaid、Andy Chen、田村 祥宏、千々和淳

EVENT REPORT

When Creative Meet Social Issues クリエイティブは社会問題に何が出来るか

【スピーカー】Waqas Jawaid、Andy Chen、田村 祥宏、千々和淳

ニューヨークのデザインスタジオ Isometric の Andy Chen さんと Waqas Jawaid さん、東京の映像制作会社 Exit Film inc. の田村 祥宏さんをお招きして、社会問題に対してクリエイティブができることをテーマにしたトークイベントを開催。第一部は、障害者スポーツや難民など様々な社会課題を扱う映像を制作しているEXIT FILM の田村祥宏さんによるトーク。「リソースの再配分」をキーワードに、田村さんが思う「社会課題×クリエイティブ」に迫りました。第二部では、Isometricの Andy さんと Waqas さんが登壇。「包括、平等、前進」をテーマに活動するお二人の社会×デザインの切り口を紐解きます。第三部の来場者を交えた全体ディスカッションでは、クリエイティブと「社会」の関わりに切り込みました。

OVERVIEW

2018.11.21(水)

スピーカー:
Waqas Jawaid(Isometric)、Andy Chen(Isometric)、田村 祥宏(EXIT FILM inc. CEO / Film Director / Creative Director)、千々和淳(株式会社コンセント / amuディレクター)

INDEX

  1. 社会問題解決の為の「リソースの再配分」ー人々との”協働”が肝
  2. クリエイティブを、次世代へ
  3. 現代社会の課題を、個人のリソースから出していく
  4. マルチカルチャーの視点を持ったデザイン ー Isometric
  5. 包括、平等、前進を促進するデザインを
  6. 「お金」「クリエイティブで重視していること」「プロジェクトの成功」を巡ってのディスカッション

社会問題解決の為の「リソースの再配分」ー人々との”協働”が肝

田村:例えば、社会問題の一つとして、東京一極集中など地方にリソースが分配されていない状況がありますよね。そんな状況がある一方で、企業は”大きく稼ぐこと”を目標にやっています。 それによって横展開・大量生産が起こり「非クリエイティブ」な状況になるのでは?と危惧しています。社会課題は、どこか一つのところが大きくなりすぎいびつになったことで生じるものだと僕は思っていて。だからこそ、「クリエイティブ」で、このいびつな状況を打破したい。いわゆる、アンチテーゼ、オルタナティブな選択肢として、です。つまり、「クリエイティブ」こそが、リソースの再分配を可能にできると思っています。

リソースの再分配とは、いわば「誰もが活躍し、分野を超えて有機的につながっている状態」だと思っています。社会は全員で変えなくてはいけないし、これはクリエイティブも同じこと。この、”みんなで作る”は、4、5年前に僕たちが制作した熊本県南小国町を舞台にした映像作品「KUROKAWA WONDERKAND」に繋がります。人口減少で衰退してゆく小さな集落とその文化や伝統をめぐって、クリエイティブによる地域リソースのオープンソース化をテーマにしたプロジェクトです。地域の方に「空撮のポートフォリオ制作をやりたい」と連絡したところ「一緒にやりたい」という声が上がりました。それならと、地域の当事者である町民の方々とともに、映像や音楽などクリエイティブの力を用いて地域の様々なリソースを、オープンソース化していきました。

神楽にある一つの演目をベースに、町民の方々と一緒にシナリオを作り、出演者もほとんどが町民。役場の方や、地域協力隊の方、農家の方など、普段は協働する機会がない人たちが、「旅館業を盛り上げたい」「集落の伝統芸能を再興したい」などそれぞれ個人的な理由を持ち寄って、参加していました。
流れとしては、フィールドワーク(スタディージャーニー)を通して、多くのステークホルダーとともにダイアログを行い、それを通して彼らのリソースや文化、そしてそれぞれの困っていることなどをクリエイターに向けて自分の言葉で語ってもらいました、そして一緒にシナリオを制作し、映像作品をはじめとした様々なクリエイティブコンテンツを生み出しました。このプロジェクトの結果として、賞を多数受賞しただけでなく、3年で潰れると言われていた神楽の踊り手が順番待ちになるほど完全復活したのです。
その後も、新たな観光事業や、南小国の木材を活用したいインテリアブランド(FIL:https://fillinglife.co/)のローンチなど、僕らクリエイティブと町民の方々との新しい繋がりが生まれ続けています。

クリエイティブを、次世代へ

田村:横瀬クリエイティビティ・クラスも印象深い経験でした。これは人口減少・地域の担い手不足などの課題を抱える埼玉県横瀬町が舞台の教育プログラムです、。”帰ってきたくなる町”をコンセプトに、教育をテーマとして地元の子供たちと多くの町民の方々と1年間行ったプロジェクトです。様々なクリエイターからキャリアについて学ぶタームと、PBL的な手法を用いて、チームビルディングやリーダーシップを映像を通じて学ぶタームに別れていました。(関連HP:https://creativity-class.xyz/

10人以上の職種のクリエイターたちが中学生を対象にクリエイティビティの基礎、多様なキャリアの可能性についての授業を実施しました。クリエイティブのキャリアについて、実際にどんな生活しているのか…というのを、リアルな例えばお金の話も絡めながら話してもらいました。そうすることで、クリエイティブ/アートに対する偏見や古いイメージを変えていこう、と。

東京のクリエイティブプロダクションや大企業のイノベーション施設を訪問したり、夏休みに、実際に海外アワードを多数受賞する映像作品の撮影現場に一流のスタッフとともに参加したり。最終的に、プログラムの集大成として、本格的なショートフィルムの制作を計画しました。このプロジェクトを通して、生徒たちはクリエイティブを通して現代社会に必要なスキルを学び、町への想いや誇りをプロトタイピングすることができました。プログラム終了後には、子供たち自身が自由な将来ビジョンを描いて、進路や活動など具体的なアクションを取り始めました。町の未来が大きく変わっているな、と感じています。

現代社会の課題を、個人のリソースから出していく

田村:最近関わったプロジェクトに、R-School Project*1(UNHCR駐日事務所後援)があります。

アイデアの共創を通して、参加者同士が互いに相手を「リソースを持つ身近な隣人」として捉えられるような関係性を構築することがこのプロジェクトの狙いです。たとえば難民の人たちであっても「自分たちはここで何かできる、求められている」というアイデンティティを回復することができる。出たアイデアよりも、そのプロセス自体を重視しました。

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*1 R-School Projectは、難民支援活動を行う学生団体「J-FUNユース」出身メンバーが中心となって生まれた任意団体。日本で暮らす難民を含むマイノリティや “Diversity and Inclusion” のあり方に問題意識を持つメンバーで構成され、本業は、デザイナー、映像制作、人材育成などさまざま。今回のテーマは「10年後には標準になっている新しい仕事」。アイデアづくりの手法などをチームに分かれて学び、国籍、年齢、職業を超えてそれぞれが持つリソースやアイデアを組み合わせながら、2日間議論を重ねた。

マルチカルチャーの視点を持ったデザイン ー Isometric

第2部では、アメリカ・ニューヨークを拠点に活動しているデザイン会社 Isometric から、Andy Chen さんと Waqas Jawaid さんが登壇。お二人のアイデンティティでもあるマルチカルチャーな視点を通しての「デザイン」に迫ります。

Andy:私たちは、2013年に設立され、ブルックリンを拠点に活動しているデザイン会社です。
国際的でマルチリンガルな5人のチームで運営しています。主に、ブランディングや、NGO、USAIDやプリンストン大学などの美術館、大学、その他の文化機関への展示デザインに特化したプロジェクトを行なっています。

私は台湾人の両親のもと、ロサンゼルスで生まれ育ち、アメリカとアジアのカルチャーの中で育ってきました。ワカスは、植民地時代のインドがパキスタンと分離する際に移住した祖父をもつ、パキスタン人です。私たちは米・プリンストン大学で出会い、その後恋人同士になりました。当時、私は社会学、ワカスは建築学を専攻していました。

大学卒業後は、私はブランドアイデンティティコンサルタント会社で仕事をしていて、その後1年間マスターを学び、ウガンダやマラウィに浄水フィルターを届けるNGO団地のプロジェクトに参加していました。ワカスは、ハーバード大学のマスターで建築を学び、パリやロッテルダムで仕事、日本でもインターンを経験しています。

その後、2013年に私がグラフィックデザインの製作やデザインコンサルタントとして Isometric studio を始め、主にNGOやテクノロジースタートアップがクライアントでした。翌年の2014年にワカスが加入し、今は5名のメンバーで活動しています。グラフィックデザインだけでなく、建築に関わるプロジェクトも行なっています。

私たち Isometric は、メンバーのバックグラウンド・アイデンティティでもあるアジア的でアメリカ的な視点を持って、グラフィックデザインや建築に携わっています。

包括、平等、前進を促進するデザインを

Waqas:私たちのコンセプトは、「inclusion, equality, progress(包括、平等、前進)」です。
NGOや政府とプロジェクトをやることが多く、例えば United States Agency(アメリカ合衆国国際開発庁)主催の「International Development Biennial Exhibition」 (https://isometricstudio.com/usaid-biennial-exhibition)を企画・実施しました。これは、オバマ政権下の米国政府における展示プロジェクトで、発展途上国における長期投資のプラスの効果を展示することが目的でした。

展示レイアウトのラフが送られてきて、6週間レイアウトを具体的な形でデザインし、1日で設営をするという、ハードなものでした。その中で、デザインにまつわる難しさを感じましたね。
例えば、「10億人以上の人が安全な飲料水にアクセスできていない」というタイトルに、蛇口に口をつけて水を飲もうとしている女性の写真、というデザイン。この女性が不名誉な立場として、まるで「小道具」のように展示されているのでは、という視点もありましたし、「10億」とすることで、この女性のパーソナルな視点をなくして、統計的な数字の印象を強く与えてしまうのでは、という視点もありました。このように、オーディエンスと作品の関係性を捉えなおすことの重要性に気づいたのです。

Andy:ニューヨーク市立博物館で開催した、 Microbes and the Metropolis の「Germ City」 (https://isometricstudio.com/germ-city-exhibition)も印象的な展示となりました。広大な社会とニューヨークにおける、科学の進歩、「細菌都市」をテーマにしています。一見深刻に見えてしまう「病原菌」の世界観を、快活に捉えて展示を試みました。
ここでは、日本の建築も参考にしました。「かわいい」と病原菌のバランスを目指して。具体的には、ペトリ皿のような大きなカーブを描いたテーブルを用いたり、車椅子の人もアクセスしやすいような動線づくりも行いました。

 

「お金」「クリエイティブで重視していること」「プロジェクトの成功」を巡ってのディスカッション

第三部は、会場の来場者を交えた、全体ディスカッション。来場者からの疑問に、田村さん、Isometricのお二人が答えます。

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Q.社会問題にクリエイティブが取り組むことは「お金」になるのか?

田村:お金は手段にすぎないと思っていて。自分は、映像でムーブメントを起こすことが目的で仕事をしています。なぜインディペンデントのプロジェクトをやっているかというと、「映像はオリジナルを作ることに、”自分”が関わる意味がある」と思っているからです。そのためには、もっと広く色々なフィールドとつながりを持たなければいけない。そうすることで、もっと「映像」が社会に対してできることを切り拓いていくことができます。つまり、社会の一員になり、映像の価値を広くする必要があると思っています。それに、外へ出て活動をして海外で賞を取れるような作品を作れば、次の仕事はちゃんと来るんですよね。熱意がある人と組めば、その先の仕事や活動に実際につながっています。

Andy:確かに、デザインは資本主義に影響を受けると言えるでしょう。私たちのクライアントはNGOが多いのですが、予算が足りないことも多いです。でも、大きなプロジェクトがあれば、分配してもらえるようにしています。「価値があるところにお金は回って来る」と思っていまして。最初提示されたお金に対しての交渉はするようにしています。それと、どんなに低予算であってもクライアントにチャージしてもらう、とか。価値のあるものを作るためには、必要なことだと思うのです。

Q.プロジェクトを行う上で大切にしていることは?

田村:自分としては、単純な「広告」にはあまり興味がなくて。商品を売って、それを購入した人だけがハッピー、なのではなくて、たとえば「エシカル」や「ダイバーシティ」のような「その先にある人達まで幸せになる」という感覚を持っている人と仕事がしたいと思っています。だからこそ、そういう人たちが集まる環境に身を置くことが、自分の中で大切にしていることの一つですね。
それと、クリエイティブには、バランス感覚が必要だとも思います。何が正しいかわからない時代、俯瞰して社会を見ることが大切です。僕も、実際にアメリカ大使館と仕事をした時に、白人が立て続けに出て来るとNG、男性が多いとNG、のような、国際社会では「当たり前」とされているところを感じる機会がありました。いかに日本がガラパゴスな世界なのか、ということを改めて感じましたね。

Waqas:実際に大切にしていることとしては、クライアントに対して企画書を作成する段階で、クライアントと一緒にリサーチ・ワークショップを開催する、というもの。最近の事例や、そもそも課題を定義するところを一緒にやるのです。アンディは完璧なやり方を追求するタイプで、ワカスはクライアントと協働していくプロセスを大事にしているので、時にサポートし、加えたりしながらプロジェクトを考えています。

Q. クリエイティブは、何を持って「成功」とするのか?

田村:自分は、視聴者数や再生回数のような数字に表れる対外的なものより、中の人(関わった人・当事者の人たち)がプロセスによってどれだけエンパワーメントされたか、を指標にしています。「枠を超える」ことも、成功の指標だと思います。何よりみんなで一緒に作って、自信になって、継続しようとするモチベーションになったり、関係性を手にいれることが、僕が考える一番の指標ですね。
Andy:確かに、クライアントの中には定量的なものを重視する方もいますね。そういったクライアントに対しては、最初に、実際に自分たちが関わったプロジェクトでフォロワーが0から20万人に増えた事例を見せて、自分たちはこれくらいできるということを示しつつ、「ブランドとして追求しているものは何か」など本質的な問いに迫っていきます。このワンステップを踏むことがキーだと思っています。

Waqas:それと、「グラフィックデザインは事業の成功を約束するものではない」ということはあらかじめクライアントに話しています。あくまでも、デザインは「演出」であり、イマジネーションや工夫が必要なのです。実際のところ、クライアントの中には「この課題を解決するにはこのデザインが必要だ、このアプローチをしてほしい」というマインドを持っている人がいます。ですが、もっと自由に、オープンに考えてデザイン自体を考えていくことが大事だと思うのです。実際に、デザインが素晴らしいものでも、クライアントのスタートアップが倒産することもあるのですから。

Q. 日本らしい、デザインとは?

Andy:purity(純真)なところだと思います。アメリカのデザインは「うるさい」です。内側で抱えている葛藤も、すぐインパクトのある表現でデザインに落とし込もうとします。メッセージを詰め込みすぎるのではなく、「考える」ことや、イマジネーションに開かれた「余白」の部分が、日本らしいデザインなのではないでしょうか。内側で感じていることと、外側に現れていることのコントラストやミスマッチ(本音と建前など)。これが、日本らしいな、と思います。

amu

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