EVENT REPORT

稀人アカデミア vol.2 「薬草からコーラまで!学校では教えてくれない“おくすり”講座」参加レポート

【ゲスト】小川 康、川内 イオ

【テキスト】柴崎 卓郎

EVENT REPORT

稀人アカデミア vol.2 「薬草からコーラまで!学校では教えてくれない“おくすり”講座」参加レポート

【ゲスト】小川 康、川内 イオ

【テキスト】柴崎 卓郎

規格外の日本人を求めて日本全国を駆け巡る“稀人ハンター”こと川内イオさんが、「自由なアイデアと行動力で世界に突き抜ける人(=稀人)」を紹介する大人気シリーズ「稀人アカデミア」。vol.2のゲストは、世界に1人しかいないの“外国人チベット医”である薬剤師の小川康さんです。今回は近代的な薬学と伝統的な医学を学んだ小川さんにご用意いただいたお手製の薬草茶をはじめ、様々な“おくすり”を触ったり、匂いを嗅いだり、実際に作ったり(!)しながら、古今東西の薬学のお話を伺いました。その熱い様子をレポートしていきましょう。

OVERVIEW

2017.09.25(月)

ゲスト:
小川 康(チベット医)、川内 イオ(稀人ハンター)
テキスト:
柴崎 卓郎

INDEX

  1. そもそも、チベット医とは?
  2. チベット医学を目指した理由は「特にない」
  3. 自家製の「おくすり」はおいしいもの

そもそも、チベット医とは?

イベントの前半は、稀人ハンターの川内イオさんとゲストの小川康さんのトークセッションに。小川さんが自らつくったという“ウェルカム・薬草茶”を飲みながらのスタートとなりました。ちなみに、この薬草茶は小川さんが朝摘んできたというハトムギとケツメイシにドクダミ(これは、近くの道の駅で買ってきたそう)を独自にブレンドした手づくのドクダミ茶なんだそう。
お店で買うイメージしかないドクダミ茶が自分でつくれるとは……と思いながら話を聞いていると、小川さんから「今日のテーマはチベット医学についてですが、もうひとつのテーマが『手づくりっていいでしょ?』薬だって実は簡単に自分でつくれるということを、今日みなさんにも知ってほしいんです」という言葉が。

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さて、今回登壇していただいた小川さんは、世界に1人しかいない外国人チベット医。……と、その前に、あまり聞きなれない“チベット医”という言葉を説明する必要がありそうです。
チベット医学というのは、“世界四大伝統医学”と呼ばれるもののひとつで、主に薬草療法を用いる医学のこと。このチベット医学を修めた人は現地の言葉で“アムチ”(チベット医)と呼ばれ、絶大なる信頼と尊敬を集めるのだと言います。
アムチになるためには、チベット国内のエリートたちが集まる「メンツィカン(チベット医学暦法学大学)」という難関大学に入学し、非常にタフな課題をこなして卒業する必要があります。しかし、現地の人でさえ入学が難しいと言われている上、小川さんの場合は外国人。それゆえ、現地の人からは「絶対に受かるはずがない」と思われていたようです。
実際の課題を見てみればそれもそのはず。「薬師如来様の御神体は何色か。その理由も合わせて述べよ」というような、言葉だけでなく現地の文化に精通していないと回答できないような内容です。そして、こうした課題を論述で回答するのに「4日間続けて10時から16時まで地面に座り込んで書きあげなければならなかった」というハードなもの。

チベット医学を目指した理由は「特にない」

イオさんからの「そもそも小川さんは東北大学を卒業して薬剤師をやってきた方。なぜチベットに行って、チベット医を目指すようになったのか」という質問に対し、小川さんから「自分でもよくわかってない」と驚くような答えが。
「ただ『チベット医学を勉強したい』という気持ちがあっただけなんです」と続けた小川さんですが、チベットに渡ったばかりの頃はチベット語を話すことすら難しい状況。「自分がどこまでできるか限界に挑戦してみよう」と自身を奮い立たせ、現地の人たちにチベット語を教えてもらいながら勉強を続けることに。すると、段々と勉強が楽しくなり、ついに超難関校への入学切符を手に入れることにつながったのだと言います。
そして、イオさんが小川さんのチベットの話の中で特に好きなエピソードだという「課題で薬草を採りに山へ行った」という話。入学したメンツィカンでは、医療に使う薬草を自分たちでヒマラヤ山中に採りに行くことがあるのだそう。3週間ほどかけて標高4500メートル級の山道を歩いて薬草を探す、命がけの行程になるのだとか。ちなみに、医療に必要な規定量が採れないと帰れないという過酷な学びの環境が伺えます。

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通常の課題ですらこのような課題が課せられるメンツィカンの卒業試験は、とてつもなく分厚い経典を目をつぶって丸々1冊暗唱する、という難題。100人ほどの関係者に囲まれ、胸にピンマイクを付け、「自分の暗唱が構内のあらゆるスピーカーから流れる」という環境で、すべてを暗唱し終えるまでの時間は4時間半もかかるそう。
そして、この難しく過酷な課題と卒業試験に合格すると晴れてチベット医として認められ、校内ではもちろん現地の人々からまでも祝福されるということです。特に、小川さんは外国人で初めてのチベット医だということもあり、小川さんがチベットを離れて8年経った今でも話題になるほどに地元の人に相当なインパクトになったと言います。
トークセッションの終盤、イオさんからの「元々西洋医学を学んでいらっしゃいましたが、チベット医学を学んだことであらためてどのような気付きがありましたか」という質問に対して、「チベットで医学を学んでいると、西洋医学、東洋医学というような分類を超越してしまう感じがあった。実際にチベット医学で使われている傷薬や胃腸薬のエッセンスに西洋医学の化学式を当てはめていくと、実はすべて理にかなっていることがわかります。つまり、西洋医学と東洋医学はつながっているんです」と小川さん。
この経験を通して「薬のことをよりよく知ることは、世界の見方がガラッと変わること」だと語ります。「近年は食育の影響もあって、“食”に注目が集まり、食材に対する見方も非常に厳しくなっています。それと同じような目線で、自分が飲む薬のことも考えてほしい」と、前半のトークセッションを結びました。

自家製の「おくすり」はおいしいもの

イベント後半は、前半のトークセッションの雰囲気から打って変わって「おくすり」を実際に作ってみるワークショップに。各テーブルに用意された材料を使って、参加者同士で協力し合いながら調合していきます。
今回のイベントでは参加者用に5つのテーブルが並べられていたのですが、各テーブルにはインド、アメリカ、江戸といったテーマが設けられていて、それに合わせた様々な材料がそれぞれに用意されていました。材料を確認しながら、何のおくすりをつくるのかを参加者同士で推測していくと、各テーブルではチャイ、葛根湯、七味唐辛子、コーラ、びわ茶をつくることがわかっていきます(葛根湯に関しては、葛自体が薬効成分を持っているため、この場で調合するのは薬事法的にNG。なので、市販の葛粉をつかった“もどき”をつくることに)。

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調合が始まると、参加者が試行錯誤しながらおくすりをつくるのを小川さんが各テーブルを回りながらフォロー。
つくるのが難しいと言われていたコーラも、少々味にパンチが出すぎたものの無事に完成。早速、参加者同士で完成したそれぞれの「おくすり」を味わってみると「……おいしい!」という声が各テーブルから上がりました。
中でも参加者から一番反響があがったのは、七味唐辛子。イオさんも「これは、おいしい!」と連呼し、その声を聞きつけた別のテーブルの参加者の方々もレシピをメモを取りにくるほどでした。

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現在、長野の別所温泉で「森のくすり塾」を主催し、大自然の中でおくすりをつくるワークショップをはじめとする学びの場を提供している小川さん。イベントの最後には「ぜひ一度、長野の薬房にも遊びに来てください。自然の中では、薪を割ったり、石を運んだり、たくさん仕事がある。遊びに来たついでに、みなさんにも手伝ってもらわないと(笑)」と告知をされていきました。
大自然の中で薬草の材料を採り、それ自身が持つ歴史や文化などの意味を考えながら調合していく——。今日は小川さんが経験したメンツィカンでの学びの一端を伺うことでその大変さを疑似体験し、医学を通して様々な世界に触れられることを実感した1日でした。

amu

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