EVENT REPORT

今夜は、映画プログラムの話をしよう――映画宣伝デザインの第一人者、岡野登さんと語る 1/2

【ゲスト】岡野登

【聞き手】小山田那由他

EVENT REPORT

今夜は、映画プログラムの話をしよう――映画宣伝デザインの第一人者、岡野登さんと語る 1/2

【ゲスト】岡野登

【聞き手】小山田那由他

映画プログラムは買う派? 映画をみる前、それとも、みた後に買いますか? 今までで一番気に入っている映画プログラムは? 数多くの映画宣伝をてがけている岡野登さんをお招きし、映画マニアで囲んでの「映画プログラム」談義のログレポートをお届けします。

OVERVIEW

2016.07.28(木)

ゲスト:
岡野登(Cipher.)
聞き手:
小山田那由他(株式会社コンセント Service Design Div. サービスデザイナー / アートディレクター)

INDEX

  1. 映画プログラムの役割
  2. 映画宣伝デザインと撮影現場の関わり
  3. 作品のテーマを解釈し、デザインで伝える
  4. 映画の世界観を伝えるためのポイント
  5. やりとりしながらアイデアを出していく
  6. デザインは、映画があってこそ
  7. プログラムに大切な「お土産」要素

映画プログラムの役割

小山田:僕はコンセントのサービスデザイナーの小山田といいます。今日は映画好きデザイナーとして、岡野さんにお話をうかがいます。まず、岡野さんから簡単に自己紹介をお願いします。

岡野:グラフィックデザイナーの岡野です。今は映画の宣伝を主にやっていまして、今日はプログラムの話なので、最初に映画の宣伝全般を説明した方がいいかなと思います。
通常映画の宣伝をするときに、一本の映画を受けて最初はロゴをつくったり、ポスターをつくったり、チラシをつくったり、チケットをつくったり、その宣伝に関わることを一通りつくってから試写状をつくったり、プレスをつくったり、広告をつくって最後にプログラムをつくるという順番になっています。皆さんが目にするのは宣伝やプログラムだと思いますが、その前から結構いろいろなものをつくっていて、一般の人にみてもらえるものと、マスコミや関係者しかみないものと、全部をひっくるめて映画の宣伝と呼びます。それを邦画だったり洋画だったり、大作系だったり単館系だったりいろんな映画がありますけど、全般的にやってます。

小山田:ありがとうございます。まず、映画プログラム特有のものとして映画制作のプロセスと密接にかかわる「プレス」と呼ばれるものがあると聞きました。プレスとは、どういったものなのでしょうか。

岡野:プレスとは、映画が公開される前にメディアにみてもらってそれを記事にしてもらう、宣伝してもらうためのツールです。基本的には皆さんがみているプログラムとほとんど同じで、イントロが入ったり、ストーリーが入ったり、キャストプロフィールが入ったり、プロダクションノートが入ったりしています。観に来てくれた人たちが記事を書く場合などに必要な情報、確実なものをプレスという形で提供します。プログラムだけをつくる場合とプレスもつくる場合があって、予算がない映画は、プレスとプログラムを兼用することもあるので、皆さんがみているプログラムがプレスと同じ場合もあるし、全然違う場合もあります。
プレスとプログラムと両方をつくっている例として『これが私の人生設計』という映画があります。これは、女性の建築家が公募に男性と偽って応募したものが通ってしまい、それをめぐって騒ぎをおこすという話で、お話からいったら、横一にして建築物をみせる方がいいかなと思いプレスは横型にしたのですが、劇場から規定通りの、縦にしてほしいといわれたので内容は一緒ですがプログラムは縦型になっています。開けてもらうとレイアウトは一緒ですが、プログラムは映画評論があって、ボリュームが増えています。最低限の情報が入っているのがプレスで、読み物として読み応えがある、おもしろい企画が入っているのがプログラムです。プログラムだけつくる場合はもうすこし、いろいろな企画を盛り込んだり、写真を増やしたり、買ってお得感がある感じまでボリュームを増やしています。それで、プレスよりは高価になっています。

小山田:今日は、映画好きな方がたくさんいらっしゃっているかと思いますが、プレスについてご存知だという方はいらっしゃいますか。僕ははじめて聞いたのでおもしろいなと思いました。
映画宣伝全体の中でプログラムはどういった位置にあるのでしょうか。

岡野:みなさんが最初に映画を目にするときは、たぶん劇場のポスターやチラシだと思います。ポスターをみてどれが一番おもしろそうだなとか、写真だったらどれがいいよね、と判断するので本当に必要な情報だけを、みたくなる要素だけを集めているのがポスターです。それ以上に情報を知りたかったらチラシの裏をみてストーリーを知ることができます。本当にいいたいところだけをまとめてつくっているのが映画宣伝の前半なんです。
プログラムというのは、観に来た人が買うものなので、一度観た映画がどういう内容かを確認するためや、別の人がみたときにはこういう見方もあるのだな、と確認できるためのものなので、前半の映画宣伝ツールとは少し違うポジションにあります。

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映画宣伝デザインと撮影現場の関わり

小山田:プログラムは買う人によって、「コレクターズアイテムや記念品として」、「映画の背景情報を知るため」、「ブログ執筆用に参考情報として使うため」などいろいろな用途があるかと思います。
映画宣伝をする中で、実際に撮影現場に行かれることもあるというお話でしたが、デザインへの影響を教えていただきたいです。

岡野:邦画は撮影の段階から宣伝に関わることが多いです。なぜわざわざ現場に行くかといえば、映画の雰囲気を知りたいからです。その前は台本しか無いので、台本の中で完成をイメージしなくてはならない。ですが、台本通りそのままつくっても必ずしも映画はその通りにならない。だから現場の雰囲気や状況を知り、役者の演技をみることで、デザインをつくる上での参考にしています。あとは、実際に現場で撮影を止めてもらって、ポスター用の写真を撮るということもあります。

小山田:現場でポスター撮りをするときは、あらかじめ読んだ台本からイメージをふくらませて撮る、というディレクションの部分もやられるんですか。 

岡野:ポスターを撮る際に、写真スタジオで白ホリという真っ白な所で撮るのと、実際のセットの中で撮るのとでは役者の演技が全然違います。どうしても撮影中に時間がとれなくて後日スタジオで撮ると、やはり役から一度離れてしまうのでやりにくいと役者さんが言っていました。演じている間にその表情で撮るということが、一番その役柄が生きている。撮影がかなりタイトなスケジュールで進んでいくこともありますが、たとえば昼休みの時間をすこしもらって現場のみんなが休んでいる間にポスターの撮影時間をとって、なるべくそのときの臨場感や役者の雰囲気を反映させたいなと思っています。

小山田:それは役者さんのコンディションが顔の表情などに出てくるのでしょうか。

岡野:2時間くらいかけて、衣装を着たりメイクをしたりすることでその間に本当に、役者がその役になっていく感じがあるんです。現場に行って立ってもらうと、空気感や雰囲気が違うというか、自然にその演技が出てくる感じがあるのでそれを大事にしたいなと思っています。

小山田:現場に入れる、入れないというのはどちらが多いのでしょうか。  

岡野:こちらから依頼するというよりも、最初に台本を読んで、まだどういう映画になるかわからない段階ですこし現場を見学してほしいといわれることがあります。具体的にどういう宣伝をするかポスターになるのかということが決まっていない段階なので、様子をみに行くだけです。ポスターをつくるときはほぼもうアイデアが決まっていて、こういう感じで撮りますというのを事前にプレゼンしていて役者も納得していて、時間を借りて撮影します。

小山田:長くお仕事をされる中で、現場をみて、これはおもしろい映画になりそうだなと感じたり、これはどういう映画になるのかよくわからないと感じたりすることはありますか?

岡野:現場の雰囲気がいいという言い方をよくしますが、たとえば監督の演出方法がいいのかもしれないですけど、役者がのっている感じがあったり、映画の制作自体がかなりスムーズにいっていたりなどさまざまです。ただ、それが必ずしもおもしろい、いい映画になるかどうかは全然わからない。現場がギスギスしていて、怒号が飛び交ったりトラブルがあったりする場合でも、でき上がってみたらすごくいい映画だったというのはある。映画の中身と現場の雰囲気というのは全然違いますね。

作品のテーマを解釈し、デザインで伝える

小山田:お話を聞いていると、映画の宣伝デザインに関わると、制作現場と関わりながら仕事ができるのがいいなと思いました。お仕事をはじめられる前から、そういう仕事だとわかっていらしたのですか。

岡野:最初は洋画の仕事が多かったので、すでに映画は完成していて、プログラムの素材写真もすべて提供されるので、映画制作の現場とは関係がありませんでした。邦画に関わりはじめてからは、ときには公開の一年前からプログラム制作に着手し、台本を読んでからデザインを起こすようになりました。関わり方がだいぶ変わりました。

小山田:邦画と洋画で映画宣伝の関わり方が違うのですね。

岡野:全然違いますね。
『ちょんまげぷりん』という関ジャニの錦戸亮さんが主役の作品があります。侍がタイムトリップして来てパティシエになるという話なのですが、これは映画が完成する前にプレスをつくりました。台本を読んでお話を聞く段階では、侍がケーキをつくったらどんな感じになるのかと思い、ビジュアルも実際、本物のプリンをつくってもらい、女子受けも狙って全体的に可愛いらしい感じでつくりました。この路線で売ってもよかったのですが、できあがった映画をみてみると、武士道、サムライスピリットが現代に来た場合に、どういうことができるのかという中村義洋監督のテーマがすこしわかって来て、それを大事にしたいなと思いました。プログラムは古い和書を参考にしています。可愛い路線から、日本人なら武士道をどういう風に理解して映画をみてもらえるんだろうと考え、仕様を変えました。
観終わった人たちには、僕が思った監督のいいたいことが伝わったようでした。宣伝的にはプレスは間口を広げるということもあるんですが、プログラムはそれとはまた違います。

小山田:この映画の CM では武士道精神を扱わなかったんですか。  

岡野:はい、そこまではいってないです。CM では武士がいきなりタイムスリップして、母子家庭の所に来て父親代わりをやることになり、じゃあどうなるんだ?  というところで止めてます。最終的な話の運びまでは伝えません。やはり、作品のテーマと宣伝的な売り方はすこし違います。

映画の世界観を伝えるためのポイント

小山田:先ほどご紹介いただいたように、プログラムにもいろいろなパターンがあると思いますが、判型などにこだわっているものがあると思います。代表的なものをご紹介いただいてもいいでしょうか。

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岡野 :『探偵はBARにいる』という映画です。タイトルにあるように探偵はいつもバーにいるという設定です。パンフレットの造形は紙マッチです。撮影現場で小道具のマッチをみせてもらったときに、これはおもしろいなと思い、今は紙マッチはあまりみかけませんが、バーだったらマッチだよねという話になりました。
映画の世界観を伝えるのに中身で伝えるというのは勿論ありますが、実際に映画の中の小道具としておいてあるものを自分で手にとって持てると、映画の世界観に一歩でも近づいた感じがあるんじゃないかなと思って。通常の本の形式の範囲内でつくっています。『探偵はBARにいる2』の場合は、今度は舞台がオカマバーのようなところなので、 “Boys party”  と書かれたレインボーカラーの紙マッチです。シリーズとして、なんでこうなっているのかというつながりがみえるようになってます。世界観を大事にしました。
あとは、今年公開された『日本刀〜刀剣の世界』という作品です。今女性の間では日本刀がかなりブームになっているんです。日本刀を説明するなら、ちゃんとみせたいなと思いました。それで、冊子ではなく、蛇腹になっていて、すべてがみえるようにしました。

小山田:すごいですね。ブームにはなっているけど、日本刀らしさというものは消さないようにデザインされている。

岡野:そうですね。日本刀ブームの火付け役は『刀剣乱舞』というゲームです。名刀を擬人化したキャラクターを育成していきます。このゲームの声優のファンなどが各地で開催される日本刀の展覧会に列をつくっているということを知った映画会社が映画をつくりました。作品は、日本刀について説明している本当に真面目なつくりです。
プログラムをつくる際は、事前にリサーチをして、ゲームにあまり寄せちゃうと嫌だ、みなさんがみたいのはあくまで日本刀なんだと考えました。そうしたいくつかの軌道修正を経て、かわいらしくというよりは、みんながみたいものをみせてあげるという方向がいいかなと思い、カタログ的な感じでつくりました。結果がこの形です。

小山田:『刀剣乱舞』のリサーチをしたときの岡野さんの発見は、デザインにどんな影響を与えましたか。 刀のいいポイントはここだというのを気をつけてつくられたのですか。

岡野:興味が無いとどれも同じにみえますけど(笑)。波紋、反り、斜めのラインが美しいなど、すごくみなさん自分のこだわっているポイントのようなものがあります。

小山田:判型も縦長で、刀を端正にきちんとみせるのに最適なフォーマットだなと思います。この形、ページネーションや中身の構成も一緒に考えられるんですか。

岡野:縦長な刀をふつうに入れようとすると、ページにすると余白がいっぱいできてしまって勿体なくなってしまう。縦長をいかしたものでなにかつくれないかなと考えました。

小山田:映画自体はどうでしたか?

岡野:映画の宣伝のようになってしまいますが、刀をつくるということは神事で、神に一回祈ってからやるという、あまりみなさんに知られていない世界です。あとは、今刀をうてる人があまりいないというのがあって、貴重なものです。実際に欲しいといっても中々買えるものではないし、持ち歩けるものではないので、魅力がわかったところで手に入るものではないのですが、この刀で名将が斬られている、こういう事件があったなど、いろいろな刀の歴史を知るとゲームでキャラクター化するというのはある意味間違っていないのかなと感じます。

小山田:映画の印象、映画自体のトーンをふまえてデザインされているわけですね。そうすることで、映画と観客、世の中のできごとをプログラムでつないでいけるんですね。

やりとりしながらアイデアを出していく

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岡野:判型にこだわっているものとして、もう一つ、『乱暴と待機』という本谷有希子さんが原作の不条理劇のような映画があります。プログラムではなににこだわったかといえば、原作の装丁イラストも描いた鶴巻和哉さんという『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』の監督をやっている人に絵を描いてもらいました。この映画のテーマになっているのが「のぞき」で、いろいろなところから主演の浅野忠信さんがのぞいている。「のぞき」のおもしろさをいかすために、つくりは不定形なものです。更にいわゆる本でいうと小口というのですが、全くそろっていないです。外側がばらばらな状態になっているという気持ち悪さというのが、きっちりした人にはたまらなく嫌なんじゃないかと思います。

小山田:すごいですねこれ。小口もそろってないと結構難易度が……。

岡野:いや、実はセンターを変えて閉じるとずれるだけで、そんなにコストはかかっていないです。とにかくこの映画の気持ち悪さを伝えるとなると中身は真面目ですが、どこかずれている笑い、ずらしというものが必要です。たとえばレイアウトの余白も全然違います。

小山田:プログラムは、つくりに関係しない値段設定がされている気がします。この映画の魅力を伝える為にはこういう仕様にした方がいいんだということを岡野さんの方から提案して、戦っているようなイメージなのか、あるいは、そうだよねこうした方がいいねと、皆さんで決めていくようなものなのでしょうか。

岡野:変わったことをやりたいから、予算を上げてくださいといって通った話は1つもないです。むしろ予算は通常通りの範囲内で、変わったことができますよという交渉をすれば、印刷屋さんは大変ですが、プロデューサーもオッケーをだします。変わったことイコールお金がかかるわけではないのでアイデアでどうにでもなります。なるべく遊びは残して、ちゃんとしたものをつくるのはそんなにむずかしくない。いろんな工夫をすると配給会社の人もおもしろがってくれるし、ここまでやってくれたら映画のなにかを表してるねといわれると、こちらもいろいろなアイデアを出します。デザイナーが勝手につくるものでもないけれど、ただ発注されてつくるようなものでもありません。
デザインのどういう部分で、作品のイメージを表現したらいいのかというのが一番悩んだり考えたりするところです。ポスターでもチラシでもそうですが、みんなが気がつかないけど通常やっていること以外のことでいろんなことに凝ってみたりしています。ですが、それは全然メインストリームではないので、あくまで遊びの要素としてわかってもらえればいいです。

小山田:なかなか気づかないけどこれはこだわっているというところはありますか。  

岡野:それいうと……あからさまにおもしろいんですよ、っていっちゃうと隠し技じゃなくなっちゃうので、気づいてもらえればいいです。なんでこう思うのかなと考えると、実は理由があったと。

小山田:このプログラムだと、たとえば小口がずれてるとか、余白が全然違うとか、ふつうの本としてみるとおかしいぞという気持ち悪さの部分でしょうか。  

岡野:気持ち悪さを伝えるのは中々むずかしいんですよね。言葉だとそう言えるのですが、絵やデザインが成立しない気持ち悪さというのは中々伝えられない。それこそ、天井からのぞいている人がいて、という気持ち悪さはみればわかりますが、そのままストレートにやるとみんな抵抗感があって嫌だと思ってしまう。みたくなるような、ある程度興味を持ってもらえる気持ち悪さとなると表現の仕方が変わってくると思います。

デザインは、映画があってこそ

小山田:ビジュアルとして映画のイメージの伝え方でおもしろい例があれば教えてください。

岡野:たとえば、『インセプション』です。規模の大きい、いわゆるメジャー系の映画なので、日本でやることはあまりなくて、本国から来たデータをローカライズといって日本化していくことがメインの作業でした。ゼロからつくる邦画とは違って、洋画は全世界で同じビジュアルでつくられていたりするのであまり工夫する隙はありません。
この映画をみた方はわかると思うのですが、かなり難解な構造の映画です。先ほどの話のように「むずかしい」とは言えないので、むずかしさはありながらもおもしろいんだよとどう伝えるかということがありました。文字でいえる所は説明しますけど、映像もすごいんだよとか話もすごいよとかいったことを伝えるためにデザインしています。ちょっとした工夫で大作系の洋画でも遊べる要素はありますが、全然違うものをつくれるかといったらつくれないです。制約のある中で遊べる要素は多少残っているという感じです。

小山田:映画のロゴも手がけられるとききました。ロゴの力の入れ具合が映画によって全然違う気がします。『インセプション』だと、バージョンの違うロゴがありますね。

岡野:オリジナルの本国のロゴを日本語化すると、迷路のようなロゴになるんです。

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これはちょっとみにくいので採用されずに、ノーマルなものになりました。だからやっぱりやり過ぎちゃうとダメですね。一般の人がみる映画なのでわかりやすさが必要です。大体一本の映画で、最低3〜7案位つくって、ビジュアルも何パターンかできてくるのでそれを組み合わせていくつかつくります。どれに決まっても対応できるような形にしています。

小山田:洋画と邦画でデザインのスタンスは変わってきますか。洋画だと本国バージョンとの距離もあると思います。

岡野:それはあんまり関係ないですね。洋画でも本国バージョンのままがよければそうしますし、あんまり使えないなと思えば変えちゃいます。

小山田:てっきり洋画の大作系ってデザインの制限があって縛られていて、「ここは守ってね」みたいなものがあるのかなと思ったのですけど。意外とないんですか。  

岡野:たとえばレオナルド・ディカプリオ(Leonardo Wilhelm DiCaprio)主演の『華麗なるギャツビー』という作品が、結構装飾的でがちゃがちゃとした凝ったロゴなんです。日本語版をつくって本国に戻して、本国と同じ加工で3D版をつくってもらいました。日本で勝手につくってというよりは、本国で加工してもらってつくることもあって、かなり行ったり来たりしてます。
本国の確認は入るので、いくら日本でいいといっても本国がダメといえば変えなくちゃいけないという場合もあります。

小山田:ロゴだけでなくて、プログラムも含めて、洋画と邦画だとどちらがやりやすいといったことはあるのでしょうか。

岡野:ケースバイケースです。洋画も邦画もデザインだけで走り出すことはほとんどなくて、映画に携わりながら進んでいくので、映画がおもしろい方に動いてもらえるとデザインも一緒になって暴走できます。映画が中々動かないとデザインだけ攻めていっても宣伝だけが浮いてみえてしまう。共同体というか、一緒に進めています。

小山田:映画自身の制作と並走するイメージでデザインされているんですね。 

岡野:洋画でも、たとえばリドリー・スコット(Ridley Scott)の『キングダム・オブ・ヘブン』という映画のときに、本国のビジュアルが監督の OK がでなくて進まなくて、日本版でつくったやつを本国に送ったら監督に気に入られて採用になったこともありました。洋画だからすべて日本が受け身になってつくっているわけではなくてむしろ日本版をつくって逆提案でこれでどうですか? とやることもある。ネットのニュースでも流れていますが、今『ターザン』という映画をやっていて、日本版のポスターだけ東山動植物園にいるシャバーニというイケメンゴリラに差し替えたバージョンをつくった。1ヶ月半前位につくったんですが中々オッケーがでなくてやっと監督と向こうのプロダクションの了承が出ました。そういった本国にはなくて、日本ならではのポスターというのは、アイデアが認められればつくります。

小山田:そうだったんですね。ぼくはシャバーニというゴリラはてっきり映画の中に出てくるのかと思いました。

岡野:それはひっかけです。
監督が来日すると、日本のポスターを高く評価してくれて、サインしてくれることなんかもあります。洋画とはいえども現場の方からの反応が来るとおもしろいです。

小山田:やりとりをしながら通じることがあるというのは、いいですね。

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プログラムに大切な「お土産」要素

小山田:話は変わりますが、プログラムの売られ方、買い方などについてはどうでしょう。僕は映画館で買うだけでなく、古本屋を漁って出会ったプログラムからおもしろい映画をみつけることがあります。

岡野:映画がおもしろくてもプログラムが必ずしもおもしろいわけではないので、一般のお客さんと同じで、映画をみて、プログラムをパラパラとみてどうしようかなと悩みます。デザインやおもしろそうな記事が載っているのでなければ買うことはありません。僕はプログラムはお土産的要素があるのかなと思っています。昔でいうペナントのような、記念品として買ってみたものの、飾るのもあれだからといって忘れてしまって、何年かたってそれをみたときにそういえばここに行ったよなという記憶が戻ってくる。プログラムもたぶん一緒で、頭から丁寧に読むというよりは知りたい情報だけ読んでどっかにしまっちゃって、何年後かにふとこの映画ってこの人とこういうタイミングでみたよなという記憶がフラッシュバックしてくることがあります。買っておけば記念品として役割が出てくるんじゃないかなと思います。中身がどの位充実しているか、情報があるのかというのもありますが、役に立たなくてもいいので残したい、手元に置いておきたいというのが意外と大事なのかなと思います。

小山田:僕は映画プログラムを鑑賞する前に買う派なので、ビジュアルや内容的にネタバレしているととんでもないことになります。ここで第1部を終了します。これまで映画プログラムはなにか、というテーマで岡野さんからお話をうかがって、この後、第2部で皆さんにディスカッションという形で、どんなことを期待して買っているのか、映画プログラムのどんなところがいいと思ってらっしゃるのか聞かせていただきたいと思います。

 (2016年7月28日@amu)

続きは2/2

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