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不確実を糧とする時代で必要なスキルとは

【Author】市川力

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不確実を糧とする時代で必要なスキルとは

【Author】市川力

10年と言わず、5年の間に人々が利用するコミュニケーションの手段が変化するような今、その速度はますます加速しつつあります。「今」求められるスキルであっても、例えば子どもが成長した時にはどのような価値を持っているのか誰も保証することはできません。だからと言ってもちろん、教育そのものの価値が失われる訳ではなくむしろますます重要になって来ています。改めて、今必要なスキルを探研移動小学校 探究ジェネレーターの市川力さんが翻訳された本を基に解説します。

INDEX

  1. 不確実を糧とする時代へ
  2. 6つのC

不確実を糧とする時代へ

教育現場では、アクティブラーニング、主体的で対話的で深い学び、探究。ビジネス現場では、成長するマインドセット、クリエイティブでイノベーティブな発想。学び方、教え方、働き方、そして生き方そのものに関わる価値観を大転換せざるを得ない状況に私たちは追い込まれています。AIによる代替機能がヒトのあり方を変え、さらには人生100年時代にライフシフトしつつある中で、この流れが加速することはあっても後戻りすることはないでしょう。新たな価値観をつくりだす時代を不安な時代と受けとめるか、冒険的な時代と受けとめるかで、人生における幸せが決まると言っても過言ではありません。従来のように、お金があれば「幸せ」、学業で良い成績を取ることが「成功」に必要なプロセスであるという「確実性」を根拠にした発想は既に崩れつつあると言えます。ではどうすれば不確実を糧として生きていけるのか。そのカギは、今、歩いているプロセスそのものを見つめ、先の見えないプロセスを歩みながら考え行動するのを面白がるマインドセットを育む必要があるのではないでしょうか。

『科学が教える、子育て成功への道』(今井むつみ、市川力共訳、扶桑社)という著書で、キャシー・ハーシュ=パセック、ロバータ・ミシュニック・ゴリンコフは「幸せ」の再定義を試みました。

「健康で、思慮深く、思いやりがあり、他者と関わって生きる幸せな子供を育て、皆が他者と協力し、創造的で、自分の能力を存分に発揮する責任感あふれる市民となり、誰もが様々な分野で輝くこと」

6つのC

これまで一般的だった「成功」と「幸せ」についての認識を根底から覆し、子どもも大人も心から「幸せ」を実感し、人生を楽しむには、親として、教師として、社会人としてどう考えたらよいか。また、子どもたちと、あるいは仲間とどんな学びの場をつくり、日々実践し続ければよいか。具体的な方法を示したのが本書です。

そのために必要な能力として挙げているのが6Csです。

・コラボレーション(Collaboration)
・コミュニケーション(Communication)
・コンテンツ(Content)
・クリティカルシンキング(Critical Thinking)
・クリエイティブイノベーション(Creative Innovation)
・コンフィデンス(Confidence)

どれ一つとっても珍しくなく、むしろ「それが大事なのはわかっているよ」という言葉かもしれません。しかし、この当たり前と思われる6つのスキルこそ、今、重要視されている非認知スキルと認知スキルとを融合し、これからの幸せ、成功する人生を支えるマインドセットの基盤となるのです。これら6つのスキルをメガネとして、学び・働き方・生き方のプロセスをふりかえり、評価し、次の進み方を考える。そんな日常を積み重ねることでクリエイティブで探究的なマインドセットが育ちます。「子育て成功への道」とは自分の中にある「子ども」の感性を「育て」、新しい価値観に根ざした「成功」を再定義し、生き続ける「道」。その「道しるべ」である6Csについて理解を深め、実際に活用するところまで行う、ただ学ぶだけでは終わらない、実践するワークショップです。

この6Csは、長年に渡る発達科学・認知科学の研究によって明らかにされました。社会的な能力やチャレンジする姿勢のような「非認知スキル」と呼ばれるスキルの重要性が叫ばれるようになりましたが、6Csは知識や論理力のような「認知スキル」と「非認知スキル」を融合しています。これからの学びをプログラムし、評価するための指標となるスキル群が選びぬかれているのです。

6Csは、以下に示した表にまとめられるように、段階を追って成長してゆくものであり、またそれぞれのスキルが相互にからみあって伸びてゆきます。

決して低いレベルのものが悪いわけではなく、それぞれの段階の学びには意味があるととらえた上で、学びの本質的課題を見つけ、どう改善してゆくか的確に判断するために6Csを用いることが重要なのです。6Csは学びと評価のためのメガネのようなものと言ってもよいかもしれません。

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6Csの学びは、いつでも、どこでも、だれとでも行うことができます。特別な場所での特別な教育は必要ありません。むしろ学校や塾で教えられて受動的に身につけられるものではなく、環境さえ整えば生活のなかで子どもが自ら能動的に身につけていくことができます。つまり、どの家庭でも、お金をかけずに実践でき、地域コミュニティでサポートしていくことができます。

また、子育て成功への道は大人も成功する道でもあり、6Csは子どもだけではなく、大人が成功し、幸せに生きていくために必要な能力でもあります。子育てを通じて大人も育ち、大人が育つから子育ても「成功」するという意味での学びの「再定義」でもあるのです。

本書は、子育てや学校場面のみならず、ビジネスの場でも6Csが必須であることがわかる事例をたくさん紹介しています。育児・教育だけでなく、これからのビジネス環境を考える上でも大いに役立つでしょう。

社会全体での学びが必要とされる時代の要請の中で、ハウツーの後追いや理論のお勉強ではなく、大人と子どもが共に面白がって、新しい学び実践を行うための具体的な方法を、この本を活用して考えだしてゆきましょう。

参考図書:『科学が教える、子育て成功への道』(扶桑社)
キャシー・ハーシュ=パセック、ロバータ・ミシュニック・ゴリンコフ(著)
今井むつみ、市川力(訳)

——– この6Csの評価方法を実践的に学ぶ全3回のワークショップを開催いたします。詳細は以下のページをご覧ください。
これからの学びの評価をデザインする‐Learning Creators As Designer-「6Csのメガネをかけて学びを評価しよう!」

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